HOME > 法律コラム > 【弁護士が解説】労働者が経営者を相手に損害賠償を請求できる4つのケースとは?!
会社を設立すれば、経営者として代表取締役になる。
また従業員から昇進して、取締役になることもある。
どちらのケースも取締役としての権限が与えられるが、それと同時に責任も重くなる。そして、その中には損害賠償の責任も含まれている。つまり「労働者から訴えられる」なんてことも可能性としてはあるのだ。
今回は労働者が、経営者並びに役員を相手に損害賠償請求が認められるかもしれない4つのケースについて、企業法務に詳しい井上義之弁護士に話を伺った。
では早速、労働者はどのような場合に損害賠償が認められるか伺った。
「典型的には、(1)経営者自身が法令違反を行った場合、(2)経営者が会社に法令違反をさせた場合、(3)経営者が会社の法令違反について監視を怠った場合、(4)いわゆる放漫経営で会社が倒産した場合、などが考えられます」(井上義之弁護士)
「このような場合において、経営者に悪意又は重大な過失があり、損害との因果関係も認められる場合は、労働者から経営者個人に対する損害賠償請求が可能となります」(井上義之弁護士)
会社法429条1項では「役員等がその職務を行うについて悪意又は重大な過失があったときは、当該役員等は、これによって第三者に生じた損害を賠償する責任を負う」と規定されており、この第三者には当然、労働者も含まれている。
例えば、やる気がなくなった経営者が、会社を意図的に潰そうと考え、会社資金を私的に流用。その結果会社が潰れ、労働者も職を失った場合は、損害賠償が認められるのだろうか。
「そのケースは(1)経営者自身が法令違反を行った場合の類型でしょう」
「また、経営者の行為が端的に労働者に対する不法行為にあたるとして、民法709条に基づいて損害賠償を求める余地もあると思われます」(井上義之弁護士)
会社法429条1項に基づく請求権の時効は10年だが、民法709条に基づく請求権の時効は3年となっているので、この点も注意して欲しい。
ちなみに損害賠償額はどうなるのだろうか。
「突然職を失ったことに対する慰謝料が中心になると思われます」(井上義之弁護士)
「交通事故などと異なり、労働能力自体は失われませんので、例えば定年までにもらえるはずだった賃金相当額の賠償請求等は困難と考えられます」(井上義之弁護士)
「勿論、実際に働いた分の賃金が会社から払われなかった場合は未払賃金相当額も損害となります」(井上義之弁護士)
経営にリスクはつきものであるが、そのリスクとは主に事業失敗時の、経営者自身の破産というイメージが認知されている。しかしこれまで述べてきたように、労働者から訴えられるというリスクもあることを忘れてはならないだろう。