HOME > 法律コラム > 勝訴率で選びたいけど、勝訴率をアピールする弁護士広告がないのはなぜ?
テレビ、新聞、雑誌、ラジオ、インターネットなどありとあらゆるメディアで目にする機会が増えた弁護士広告。その中でも特に債務整理や過払い金、交通事故、離婚、相続などの広告を目にすることが多いだろう。
では更にそこから詳細を見ていくと、所属する弁護士の数が多いことや拠点の数、また広範囲な対応エリアをアピールし、消費者に安心を与えようとする広告が多いことに気付く。中には、今まで取り扱ってきた実績の数を明記するところもあり、消費者としては弁護士を選ぶ際の一つの基準になることは間違いないだろう。
しかし、何故か、勝訴率をアピールする広告や過去に取り扱ってきた案件を表示している弁護士広告は見かけない。
相談者としては、やはりその分野の専門家に頼みたい、あるいは自分と同様のケースを過去に対応した弁護士に頼みたい、というのが本音ではないだろうか。ではなぜ勝訴率や過去に取り扱ってきた案件を広告に表示しないのか、その理由を鈴木翔太弁護士に伺った。
2000年に自由化された弁護士広告。自由化といっても完全ではなく、広告の運用においてルールが存在するのだろうか。
「日本弁護士連合会会則29条の2は、ルールに従う限りにおいて、弁護士の広告を認めています。弁護士が従うべきルールが具体的に規定されているのが『弁護士の業務の広告に関する規定』とその運用指針です」(鈴木翔太弁護士)
やはり広告運用にあたっては、守られなければならないルールがあるようだ。
広告出稿において、守られなければならないルールとは具体的になんだろうか。
「弁護士は、面識のない者に対して訪問や電話による広告をすることが禁止されているほか、事実に合致していない広告、誇大または過度な期待を抱かせる広告、困惑させ又は過度な不安を煽る広告や、弁護士の品位または信用を損なうおそれのある広告が禁止されています」(鈴木翔太弁護士)
確かに、突然弁護士が「何かお困りごとはありませんか?」と電話を掛けてきたり、自宅訪問してきたら、色々な意味でびっくりするだろう。
では肝心の勝訴率や、過去取り扱った事件を広告でアピールすることはどうだろうか。
「訴訟の勝訴率や、受任中の事件、過去に取り扱った事件を表示することは禁じられています。弁護士の品位保持の目的は、国民の弁護士に対する信頼を維持することにあるため、そのような趣旨に則った規定が整備されているのです」(鈴木翔太弁護士)
要は、弁護士としての品位や信用を損なう恐れがある広告は全て禁止ということなのだろう。
これまで弁護士の広告運用に存在する幾つかのルールを鈴木翔太弁護士に紹介して頂いたが、大事なことは広告出稿にあたって禁止されているだけで、相談者が、弁護士に直接聞くことは特別禁止されているわけではないということである。
ただし、実績を聞かれて、中には嫌な顔をする弁護士がいることも忘れてはならないだろう。弁護士は医者とは違い、受任義務が存在しない。そのため、本当に依頼したいと思ったとしても、失礼な態度を取ってしまえば、断られる可能性があるということだ。
弁護士を選ぶ際、実績を重視するか、あるいは人間性を重視するか、人それぞれではあるが、これまで述べてきたことが何かの参考になれば幸いである。