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社会問題化する奨学金破産。本人のみならず保証人である親も破産の可能性あり。対応策は?

日本学生支援機構の「学生生活費調査(平成24年度)」によると、大学生(4年制大学、昼間部のみ)のうち、52.5%の人が何らかの奨学金を受給していると発表している。

そして同機構によると、2013年時点での滞納者は33万人、滞納額は876億円であるとも発表している。

今回はこの奨学金破産について、塩澤彰也弁護士に話を伺った。

若くして破産することのデメリットとは?

これまでの自己破産といえば、事業失敗、失業やリストラ、生活費や医療費不足、ギャンブルなどが一般的なイメージだっただろう。しかし、今後は奨学金も破産理由の一つとして、馴染み深いものとなっていく可能性があり、その大きな特徴は、比較的若い世代が対象となることだろう。そこで、まずは若くして破産することのデメリットを伺った。

「法律家(弁護士や司法書士)に債務整理を依頼し、法律家から債権者に債務整理の連絡をした時点で、債権者は、信用情報(いわゆるブラックリスト)に載せます。もっとも、3か月以上滞納しているような場合には、すでにブラックリストに載っている可能性が高いです」(塩澤彰也弁護士)

「そして、任意整理(毎月の返済額を減らしてもらう等)と異なる、破産のデメリットとしては、官報(国の広報誌)に載る、ということがあります。もっとも、通常、官報を見ている人はほとんどいませんので、実際に官報に載って支障があるケースは非常に少ないです」(塩澤彰也弁護士)

「その他には、資格制限といって、破産申立中は、保険の外交員、警備員、各士業等の職に就くことができない、というデメリットがあります」(塩澤彰也弁護士)

奨学金とは言葉を変えた借金である!返済できないなら親にも責任が及ぶ!

そもそも奨学金は、借金と考えていいのだろうか。

「奨学金には、貸与でなく贈与のケースもあります。しかし貸与の場合は、借金と同じと考えてよいです。違いは、一定の職に就いた場合には、その借金を返さなくてよいなどの特約が付いているケースがあること、保証人が要求されるケースが多いことがあるかと思います」(塩澤彰也弁護士)

多くの場合、保証人は両親となっているだろう。ではもしも両親も返済することができない場合はどうなるのだろうか。

「父親が保証人となり、その父親も返済できない場合には、父親も破産する可能性があります」(塩澤彰也弁護士)

破産以外の救済はないのだろうか。

「奨学金の場合は、法律家などに依頼しなくても、普通の借金の場合以上に(普通の借金の場合、法律家が入らないと減額してくれないケースが結構ある)、毎月の返済額を減らす要望などに応じるケースがあるようです」(塩澤彰也弁護士)

マイナンバーを用いて、年収に応じて返還額が変わる「所得連動返還型奨学金」

先日、マイナンバーを用いて年収を把握し、返還額を、返済能力に応じて変える「所得連動返還型奨学金」を、2017年度の大学進学者から導入できるように検討を始めたと文科省が発表した。

この所得連動返還型無利子奨学金制度、実は2012年から既に存在していた。年収300万を下回った場合、返還を猶予するというこの制度は、その年収の把握を、納税証明書の郵送で管理していた。そこで今回は、それをマイナンバーに切り替えようということだろう。

塩澤彰也弁護士は奨学金の返済で困った場合、毎月の返済を減額する交渉をしてみることを一つの対応策として話したが、今後はマイナンバーでの管理によって、無理に自己破産をしなければならないという事態が減っていくことも期待できそうだ。

取材協力弁護士  塩澤彰也 事務所HP Blog Facebookページ
東京弁護士会所属。塩澤法律事務所代表。主に借金問題、交通事故、遺言・相続、労働問題についての実績多数。対応エリアも東京、千葉、埼玉、神奈川と幅広く可能。

ライター 井上大輔(photo by Pictures of Money