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会社が倒産!原因次第では会社を相手に損害賠償請求も可能?どんなケース?

会社による労働者を相手にした損害賠償請求が相次いでいる。
今年の5月、パワーハラスメントによるうつ病で退職せざるを得なかった北海道在住の男性(26)が、元勤務先の会社から「退職は詐病によるもの」と1200万円の損害賠償を求めて提訴された。
またその他に、ソーシャルゲームの開発中に退職した従業員が、会社から開発頓挫の責任を追及され、5400万円の損害賠償を請求されたケースもあった。
会社と従業員による訴訟トラブルと聞くと、訴えられる側として思い浮かぶのは労働者だろうが、勿論逆のケースも存在する。
さてそこで今回は、労働者が会社を訴える際に、会社が倒産したことを前提として、どんなケースであれば可能かを井上義之弁護士に伺った。

全ての責任を会社に負わせることは萎縮を招く

「会社経営にはリスクがつきもので、考え抜いて会社のために良かれと思って行った経営判断が裏目に出て経営が破たんすることもありえます。常に経営者個人に倒産の責任を問うと経営の萎縮を招くでしょう」(井上義之弁護士)

まずはこう話す井上義之弁護士。確かに経営者ともなれば大きな期待と責任を背負っている。小さい判断から大きな決断まで、その一つ一つが大きな影響力を持っており、ひとつでも誤れば一点窮地に陥ることも十分に有り得る。その一つ一つの責任を経営者に問うのは無理があろうだろう。

その経営判断に合理性があったかどうかがポイントとなる

「そこで経営判断の是非が問題になる場面では、少なくとも経営判断の過程や内容に不合理な点がある場合にはじめて経営者に善管注意義務(会社法330条、民法644条)違反が認められ、労働者からの損害賠償請求が認められる余地が生じるものと考えられます」(井上義之弁護士)

「経営判断の結果、会社が倒産しても必ずしも損害賠償請求できるわけではありません」(井上義之弁護士)

一点、誤解とならないよう注意したいのが、会社の利益を考えた判断が、結果的に逆効果となることは決してありえないことではないため、その全てが善管注意義務となるわけではない。井上義之弁護士も述べている通り、問題となるのは、その判断や行動が経営者として合理的であったかどうかである。

損害賠償額は突然職を失ったことに対する慰謝料が中心

では不合理な判断とはどんな判断であろうか。

「法令違反により会社が倒産した場合は、そもそも経営者に経営判断としての裁量を認める余地がありませんので、悪意・重過失や損害との因果関係が認められる限り、損害賠償請求ができると言ってよいでしょう」(井上義之弁護士)

判断ミスには「やるべきことをやらなかったミス」と「やるべきではないことをやってしまったミス」の二通りあるといえるだろう。法令違反は後者の分かりやすい例といえる。

井上義之弁護士の言うとおり、経営にリスクはつきものであるため、全てのミスについて責任を負わせるようなことは決してあってはならない。しかし自ら法令違反となるようなことを行った場合の経営者の責任は問われて当然だ。

ちなみにもし不合理な判断によって会社が倒産し、従業員の損害賠償請求が認められたとしても、その額は突然職を失ったことに対する慰謝料が中心になるだろうと井上義之弁護士は言っている。もしも訴訟提起を検討するならば参考にしていただきたい。

取材協力弁護士  井上義之 事務所HP
第一東京弁護士会所属。主な活動歴「文部科学省 研究開発局 原子力課 原子力損害賠償紛争和解仲介室 主任調査官」「関東財務局 関東経済産業局 中小企業経営革新等支援機関」「第一東京弁護士会 労働法制委員会」などその他多数あり。趣味は60カ国以上を訪問してきた旅行(南極大陸も経験あり!)、キリマンジャロやヒマラヤなども経験済の登山、その他スポーツ全般。取扱分野は幅広く、依頼者のあらゆる要望に応えるために、他の士業とも連携し迅速対応を心がけています。

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