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「自筆証書遺言」よりも「公正証書遺言」の方がお薦めな理由を弁護士が解説

「全ての遺産は家政婦に」と資産家女性が残した遺言に反して、実娘2人に遺産を不当に持ち去られたと主張し、返還を求めて提訴した家政婦の女性(68)の訴えが、25日認められた。

訴えられた実娘2人は「遺言は無効だ」と主張していた。しかし「介護せず資産のみに執着する実娘2人と違い、資産家女性に50年以上、献身的に仕えてきた。遺産で報おうとした心情は自然だ」と原克也裁判長が述べた。

近年、このような遺産相続のトラブルが増加傾向にあることをご存知だろうか。

司法統計においても、全国の家庭裁判所における遺産分割をめぐる事件数が平成12年度では8889件に対して、平成26年度は1万2577件に増加した。

そこで今回は、このようなトラブル回避のために注目されている公正証書遺言について、相続問題に強い中島宏樹弁護士に伺った。

自筆証書遺言では、遺言者の意思が無効となる可能性も…

遺言の本来の目的は、死後、遺言者の意思の通りに遺産の処分をしてもらうためであるが、その中には、遺産分割の争い回避も含まれている。しかし、その目的を果たすには、自筆遺言証書では不安が多いと中島宏樹弁護士は話す。

「自筆証書遺言は、遺言者が、全文・日付・氏名を自書し、押印を行う必要があります。例えば、手が不自由になり親族に代筆してもらったり、日付を吉日としたり、氏名に雅号を用いたり、遺言者の押印がなかったりした場合、いずれも無効となり、遺言書としての効力は生じないこととなります」(中島宏樹弁護士)

「また、自筆証書遺言を加除訂正するには、遺言者が、その個所を指示し、変更内容を記載して、署名押印を行う必要があります。例えば、加除訂正を行ったもの、署名押印を忘れた場合には、加除訂正は無効となり、抹消前の遺言が有効となります。さらに遺言者が故意に破棄した場合には、その部分については、撤回したものとみなされます」(中島宏樹弁護士)

「自筆証書遺言は、文字が書けさえすれば、手軽に作成することができますが、せっかく作成しても、有効要件が欠けるものとして、無効となってしまう恐れがあります。また、自筆証書遺言を執行するには、家庭裁判所にて推定相続人全員による検認の手続きが必要となり、時間を要することとなります」(中島宏樹弁護士)

公正証書遺言は、遺言者の意思が無効となる可能性が極めて低い

「他方、公正証書遺言の場合には、作成費用はかかりますが、文字が書けなくても作成することができ、公証人によるチェックを経て作成されますので、無効となる恐れは低くなります。また、公正証書遺言を執行するには、検認の手続きは不要で、遺言執行者の定めがあれば、被相続人死亡後、直ちに執行することができます」(中島宏樹弁護士)

無効となる可能性が低いことと、死後すぐに執行できるというのが最大のメリットだろう。
費用が気になる方は公証人手数料と、専門家への費用が別途かかるので、詳しくは直接お問い合わせ頂きたい。

遺言が有効となれば、相続税にもメリットが?!

「現在、遺言書を作成した場合には、相続税の計算に当たって、控除を行う制度の導入が検討されています。遺言書作成による控除を受け、遺言書の内容をより確実に実現するためには、公正証書遺言を作成しておくことをお勧めします」(中島宏樹弁護士)

政府・与党は、一定額を相続税の基礎控除額に上乗せして控除する「遺言控除」を、早ければ平成29年度税制改正で実現させると目指している。条件はたったのひとつ「有効な遺言による相続」だ。

つまり遺言控除を受けるためには、遺言を有効とさせる必要があり、自筆証書遺言では有効性に不安があるため、公正証書遺言がお薦めなのである。

遺言書を作るなら、「争いの回避、遺言者の最後の意思の実行、相続税の控除額上乗せ」と良いこと尽くしの公正証書遺言を是非検討してみてはどうだろうか。

取材協力弁護士  中島宏樹 事務所HP
京都弁護士会所属。京都大学法学部を卒業後、2005年に旧司法試験に合格。その後、法テラス広島法律事務所の初代所長にも就任。現在は弁護士法人京阪藤和法律事務所 京都事務所に所属。相談者に寄り添うことを信条に、冷静と情熱の絶妙なバランスを心掛け、理想の解決に迅速対応します。