HOME > 法律コラム > 夏のプール開放、事故予防で中止の動きも。事故が起きたらどうなるか弁護士に聞いてみた!
夏休みといえば学校のプール教室という定番が崩れ始めています。
この夏、西宮の小学校の約3割が夏休みプール開放を中止としたそうです。兵庫県警が各市町に送付した文書が原因です。内容は、3年前に大阪で小1男児がプールで溺死した事故を受け、監視員にライフセーバーなどの資格を求めたものです。
関係地域団体は「資格がない監視員が大半で、何かあっても責任が持てないし、資格を取るのも間に合わない」との理由からやむなく中止を決めたそうです。
でも、資格があるからといって事故が起きないか?と言えば、そんなことはありませんね。万事を尽くしても起きてしまうのが事故です。では、監視員の元でもし事故が起きたら? 学校で事故が起きたら、どこまで問えるのでしょうか。
多くの学校は、教員か保護者が交代で監視委員をしています。事故時の責任が重くなることが明らかになれば、今後引き受け手も減り、西宮に続く市町村も増えてくるかもしれないですね。夏のプール、気をつける点を星野法律事務所の星野宏明弁護士に話を聞いてみました。
刑事上は,業務上過失致死傷罪や過失致死傷罪に問われる可能性があります。監視員は,業務としてプール利用者の安全を監視すべき義務があり,業務遂行上,現場の状況に適した監視体制,監視業務をする必要があります。
例えば,利用者が通常でない異常な使用方法をしたために,事故が起きた場合,具体的には監視委員から見えない場所で,自ら重りをつけて泳いでいた,あるいは飛び込み禁止箇所から突然プールに飛び込み,プール床に衝突して即死したような場合には,監視員が監視義務を尽くしても事故は防げなかったでしょうから,基本的に過失はなく,罪に問われることはないと考えられます。
他方,溺れている人を用意に発見できたのに,プール内を注視していなかったために救助が遅れた場合などは,監視員の過失が認められる可能性もあります。
免責の同意書を提出しても,一切責任を問えなくなるわけではありません。
そもそも,プールの施設や監視体,監視員の能力に問題があったために事故が起こった場合,本人や親は,不法行為の規定により責任追及することができます。
不法行為の法律の規定は基本的に強行規定とされており,当事者間で責任を自由に免除することができないと考えられます。自由に不法行為責任を免除できるとすると,強引に被害者の同意を取りさえすれば,暴行や傷害を加えることもできるようになり,公序良俗に反する結果となります。
免責同意書があっても,学校側の施設管理や監視体制に重大な不備がある場合には,過失責任に基づき,損害賠償請求の対象となります。
なお,刑事上の責任は,国家による刑罰権の行使ですので,当然,免責同意書があっても,免責されるわけではありません。
学校側が責任を負わないとされている範囲を確認しましょう。
免責同意書があっても,プール内での監視体制の明らかな不備であれば,責任追及することはできますが,例えば,プール利用の本質に関わらない,更衣室や洗面所での転倒事故については,施設を管理する学校側の責任を問えなくなる場合があります。
また,免責同意書において保護者の同伴を必須としているにもかかわらず,保護者が同伴せずに子供だけで利用して事故が起きたような場合には,免責までいかなくても責任(賠償額)が軽減される事由となる可能性があります。