HOME > 法律コラム > 特別な手続きは一切不要の裁判傍聴。しかし最高裁だけはちょっと勝手が違うんです!
傍聴会とかそういったもの以外で傍聴に行ったことのある人は知っているはずだが、裁判傍聴をするには何の手続きもいらない。当日裁判所に行って開廷している法廷を見つけて、あとは「傍聴人入口」と書いた扉から法廷に入るだけ。ニュースでよく出てくる傍聴券の配布とかはよっぽど話題になった事件だけで、ほとんどの裁判は傍聴席はがらがら、傍聴人がまるでいない事件の方が多いと聞く。
ところが、最高裁の場合だけはちょっと違う。特に傍聴人が使う入口があって、(南口だったかな)そこで警備の人に係員を呼んでもらう。係員さん、ちゃんと入口までやって来てくれて案内してくれる。建物に入るとすぐロッカーがあるから、荷物はそこに収納。法廷へは持ち込み不可である。
係員さんの態度といえば物腰は静かで穏やか。法廷までの廊下から、社会科見学とおぼしき小学生たちの姿が見える。
知っている人は知っていると思うが、最高裁には3つの小法廷とひとつの大法廷がある。
小法廷にはそれぞれ5人の裁判官で構成され、大法廷はそれら小法廷の裁判官が全部、つまり15人の裁判官で構成される。裁判官席も小法廷が5席、大法廷が15席。
そのうち小生が案内されたのは、第2小法廷。内部といえば装飾はなくシンプルなものの清潔感あふれ、地裁や高裁に比べても明らかに天井は高く、部屋の壁や床のカーペット、座席に至るまでいい素材を使用しているということだろうか、大変に落ち着くところである。
ああ、ここで午後のひととき、ゆったりとコーヒーでも飲んだらさぞかし気持ちがいいだろうな、今度デートでコーヒーとお菓子でも持ち込んで来てみたいな、などと考えが浮かぶ。いやいや、無理・無理・無理、絶対無理。飲食物など持ち込んだら、確実につまみ出される。そりゃあそうだ。ここは喫茶店でもホテルのロビーでもない、法廷内。飲食厳禁である。しかし惜しいな、そんなことを思いながら裁判が終わるまで傍聴席でおとなしくしていた。
裁判傍聴は憲法でも認められた国民の権利であり、誰でも行くことができる。
前回書いた通り手続きも不要で目的を問われることもなく、たとえデートに使っても構わない。ただし気をつけねばならないのは裁判所は娯楽施設ではないということだ。
そこで審議されているのは当事者にとって人生の一大事、その後の人生が決定付けられてしまうような事件から、国のあり方の根幹に関わることまで判断がなされる。
立法・行政と並ぶ、国家の重要な役割を担う場である。傍聴に行くのに変に肩に力を入れる必要もないだろうが、厳粛な審理の場所であるということ、自らも忘れないようにと考えている次第である。