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遅刻で会社に損害が発生!遅刻の理由次第では法的に問われる責任も変わる?

「もうこんな時間だ!やばい、遅刻する!」ーー誰もが一度はこんな経験があるだろう。

それは例えば大切な試験、友達との約束、彼氏や彼女とのデートかもしれない。しかし、最も冷や汗をかくのは仕事における大事な商談の遅刻かもしれない。

あの手この手を駆使して、なんとかこぎつけた大事な商談。この商談を逃せば、会社に大きな損害が発生。となれば、それはその人個人だけの責任にはとどまらないだろう。

さてこんなケースにおいて、その遅刻の理由次第では会社から問われる責任に変化が生じるのだろうか。例えば遅刻の理由が寝坊だった場合と、交通機関の遅延だった場合ではどうだろうか。今回はこの問題について井上義之弁護士に話を伺った。

会社員に落ち度が無ければ責任は問われない

「因果関係や損害については争いがないものと仮定した上で、ある会社員が遅刻し、取引先との重要な商談が流れて、会社に損害が生じた場合を考えましょう」(井上義之弁護士)

いかにもありそうなケースだ。では早速であるが、その遅刻の理由によって、会社から問われる責任は変わるのだろうか?

「遅刻について、この会社員に落ち度がない場合、会社に対して損害賠償責任を負うことはありません」(井上義之弁護士)

会社員に落ち度、つまり過失がなければ責任を問われることはないと話す井上義之弁護士。

会社員に落ち度があっても、その責任は制限される

では会社員に落ち度があった場合はどうなるのだろうか。

「会社員に落ち度がある場合、債務不履行又は不法行為として損害賠償責任を負うことがあります」(井上義之弁護士)

「もっとも、従業員のミスによって生じた会社の損害を全て従業員が負担しなければならないとすれば、会社に比べて資力に乏しい従業員にとって酷ですし、事業上のリスクはそれにより利益を得ている会社が負担するのが原則です。そこで、従業員が業務上会社に損害を与えた場合、故意による場合を除き、その損害賠償責任は制限されると解されています」(井上義之弁護士)

会社員の落ち度によって、会社に損害を与えれば、それはその会社員が責任を取るというのは当然かもしれない。しかし、その問われる責任については、とても個人では負うことができないような責任ではなく、ある程度考慮されると話す井上義之弁護士。

ではどのように考慮されるのだろうか。

「この責任制限の検討にあたっては様々な事情が考慮されます。具体的には、従業員の地位・職務や会社のリスク防止措置の有無といった事情のほか、会社員の落ち度の内容・程度も考慮されます」(井上義之弁護士)

「会社員に重大な落ち度がない場合には、他の事情も影響しますが、会社からの損害賠償額が軽減されたり、会社からの損害賠償請求が認められないのが一般的です」(井上義之弁護士)

会社員の立場、会社の危機管理対策、会社員の遅刻の理由とその程度などなど、ありとあらゆる事情が考慮されようだが、場合によっては損害賠償自体が認められないこともあるかもしれないという。

たった一つの遅刻が取り返しの付かないことに?!

たった一つの遅刻が人生を大きく狂わす可能性もある。

まさしく「たかが遅刻、されど遅刻」である。

ちなみに途中何度もでてきた「落ち度」であるが、これは「普段から遅刻をしないように気をつけていたか」や「遅刻をしないために何をしてきたか」等という部分が問われるため、もしもこれをご覧になった方の中に遅刻に常習犯がいる場合は、是非この点気ををつけていただきたい。

取材協力弁護士  井上義之 事務所HP
第一東京弁護士会所属。主な活動歴「文部科学省 研究開発局 原子力課 原子力損害賠償紛争和解仲介室 主任調査官」「関東財務局 関東経済産業局 中小企業経営革新等支援機関」「第一東京弁護士会 労働法制委員会」などその他多数あり。趣味は60カ国以上を訪問してきた旅行(南極大陸も経験あり!)、キリマンジャロやヒマラヤなども経験済の登山、その他スポーツ全般。取扱分野は幅広く、依頼者のあらゆる要望に応えるために、他の士業とも連携し迅速対応を心がけています。

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