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新幹線通勤は非課税なのに、どうしてタクシー通勤は課税される?(松嶋洋)

弁護士などに業務を依頼する際、その交通費についても、実費として請求されることがあります。

この交通費ですが、実際に弁護士などが働いた対価ではありませんので、源泉所得税の対象外になるとお考えになる方が多いようです。

例えば、10万円が報酬、2万円が交通費とすれば、10万円についてのみ源泉徴収の対象として1万円(10%。復興所得税は考慮しません)を天引きすることが多いですが、原則としては交通費部分も含めた1万2千円を源泉徴収する必要があります。

弁護士などに対する交通費の取扱い

交通費部分につき、源泉徴収が不要となるケースは、直接交通機関等へ通常必要な範囲の交通費や宿泊費などを支払った場合とされています。このため、実費精算として交通費を弁護士に支払うのであれば、源泉徴収が必要になります。

後述する従業員への通勤手当と同様に考えることがありますが、それは誤りですのでご注意ください。なお、消費税についても同様の取扱いとされており、直接交通機関等に支払うものでなければ、交通費を合わせたところで消費税が課税されます。先の例で行けば、8千円(10万円×8%)ではなく、9600円(12万円×8%)の消費税がかかることになります。

給与の場合は非課税扱いではあるが…

一方で、従業員に通勤手当を支払う場合は、その通勤手当部分は、原則として源泉徴収の対象にはなりません。従業員への通勤手当については、1か月あたり15万円(平成28年1月以降。従来は10万円)までが非課税とされているからです。

なお、この通勤手当の取扱いは、交通機関の運賃、距離、時間を考慮して「経済的かつ合理的な方法による金額」による通勤手当について適用されます。すなわち、一般的に考えて常識的な通勤手当について、1月あたり15万円を限度に非課税とされているわけで、通勤手当として15万円出せば無条件で非課税とはなりません。

このため、例えばタクシーで通勤するため1か月あたり15万円かかる、といった場合には、タクシーの通勤は健常者であれば常識として考えられませんので、それは認められず、一般的な電車通勤などの場合の実費相当部分を超える部分については、給与として税金が課税されると考えられます。

新幹線はOK

ただし、新幹線通勤はOKとされています。一般的に、新幹線通勤は多いとは言えませんが、15万円に増額された取扱いも新幹線通勤を想定していますので、新幹線通勤に係る通勤手当については、非課税として源泉徴収も不要とされます。

●執筆:元国税調査官・税理士 松嶋洋 WEBサイト
東京大学を卒業後、国民生活金融公庫を経て東京国税局に入局。国税調査官として、法人税調査・審理事務を担当。国税局を退官後、経団連関連の税制研究所において、法人税制を中心とするあるべき税制の立案と解釈研究に従事。現在は、税務調査対策及び高度税務に関するコンサルティング業務に従事するとともに、税理士向けに税務調査・法令解釈のノウハウにつき講演執筆活動を行う。

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