HOME > 法律コラム > 香典や生命保険金は故人の財産?相続や遺産分割の対象になるの?
「家族葬に香典は、本当に不要?」ーー香典不要と言われる家族葬だが、不要であると事前に聞かされている場合ならともかく、いざ家族葬に参列する際に、本当に用意しなくてもいいかどうか悩む方が多いという。
この答えのヒントとなるのが、そもそも香典は誰に贈るものなのか知ることである。考えられる選択肢は故人か、遺族や喪主のどちらかであるがもしも故人であった場合、これに紐付いて更に一つの疑問が生じる。
それは、その香典が故人の財産としてみなされ、相続の対象となるかどうかである。また香典同様に、死後に発生する生命保険金はどうだろうか。家族葬に香典が不要かどうかについて考えると共に、今回は香典や生命保険金が相続財産の対象となるのかどうかを飛渡貴之弁護士に伺った。
まずは生命保険金が相続財産の対象となるのかどうかについて伺った。
「生命保険金は、受取人の固有の財産であり、相続の対象となりません」(飛渡貴之弁護士)
理由はなんだろうか。
「生命保険金は、被保険者たる被相続人が死亡して初めて発生するものであり、被相続人が生前持っていた財産ではありません」(飛渡貴之弁護士)
「ただし、相続人間で著しく不公平な結果となる場合に、公平の観点から、生命保険金について、相続財産として考慮される場合があります」(飛渡貴之弁護士)
生命保険金は、故人が生前から所有していた財産でないため、相続の対象ではないと話す飛渡貴之弁護士。ではこの考え方に照らし合わせると、香典も同様に相続財産の対象から外れるのだろうか。
「香典についても、被相続人が生前持っていた財産ではありません。後々発生するものですから、相続の対象とはなりません」(飛渡貴之弁護士)
やはり相続財産にはならないという。ということは、冒頭で触れた「香典は誰に贈るものか?」という問いについて自然と答えが出るだろう。
「香典は、葬儀を主催した喪主のものです」(飛渡貴之弁護士)
香典の法律的な解釈は、遺族を代表する喪主への贈与となっている。しかしそれ以前に、死者を供養し、遺族の悲しみを慰めるという意味が根底に込められている。具体的には、遺族の葬儀費用の負担を軽くするという目的だ。
しかしながら、香典を頂いた遺族は、そのお返しをしなければならなく、それが逆に迷惑となってしまうことも考えられる。また家族葬には、そもそもそういった形式的な慣習を排除するという意味もある。
では家族葬に香典が不要かどうか迷った場合はどうすればいいか。これは、直接遺族に聞いてみるしかないだろう。不要だと言われたら用意する必要はない。しかし、不要だと言われたにも関わらず、お悔やみの気持ちを表現したいならば、お花やお線香など、受け取った遺族が負担になることがないような、ささやかな範囲で表現すると、遺族にとっても、勿論故人にとっても喜ばしいことになるのではないだろうか。