HOME > 法律コラム > 【交通事故・無形損害】慰謝料がどのように決まるか弁護士に聞いてみた!
「訴えてやる!!」ーーテレビでよく耳にするフレーズであるが、これが意味すること、それはつまり「損害賠償を請求する」ということと、ほぼ同じ意味で用いられている。
しかし、損害賠償の請求と一口に言っても、精神的損害(慰謝料)や無形的損害(重要文化財の棄損など)、有形損害、売買代金、貸金返還請求など、多種多様な法律関係があるため、その法的根拠となる請求権の内容によって異なる。
前回は離婚の慰謝料の決め方について伺ったが、今回は交通事故と無形損害について再度、星野宏明弁護士に話を聞いた。
まずは交通事故の慰謝料の決め方について伺った。
「交通事故の慰謝料については、入通院期間の実日数に対応して、容易かつ機械的に算出できるよう、裁判実務の基準がありますので、入通院期間の長さに応じて機械的に算出される額を基準として、個別事案の事情を加味して微修正した金額が慰謝料と認定されます」(星野宏明弁護士)
「当然ながら、請求額を大きく盛れば、最終的な判決の金額も大きくなるという関係にはありません」(星野宏明弁護士)
慰謝料は、目に見えない精神的被害をお金に換算することである。離婚の場合、特に有名人ともなるとその請求額が高額となることもあるが、交通事故に関してはそういったことはないようだ。
では重要文化財が棄損されるなどの無形損害に対しての慰謝料はどうだろうか。
「重要文化財が棄損されたり、信用棄損による損害など、損害の数値化が難しい場合があります」(星野宏明弁護士)
「この場合も、鑑定による評価や、信用棄損による売上減などの影響をできるだけ客観的に金銭換算した額が損害となります。ある程度、裁判官の裁量に委ねられる側面は否定できませんが、請求額を大きく盛れば、最終的な判決の金額も大きくなるという関係にないことは同じです」(星野宏明弁護士)
重要文化財となると、それまでに築き上げた目に見ることなど到底できない信用が、山程積み重なっているはずだ。そして、それが棄損されるとなれば、信用回復までの道のりが果てしないことは間違いない。棄損された被害者からすれば、より多額な請求をしたくなるだろうが、それでも出来る限り金銭的な損害に換算し、適正な額になるという。
今年の1月に総務省は、重要文化財の壁や門などに落書きが8件あると発表した。
その中には世界文化遺産にもなっている「法隆寺地域の仏教建造物」と、「古都奈良の文化財」も含まれていた。そして具体的な落書き行為については「門に文字が彫られていた」や「柱や壁にペンで落書き」、「文字の刻印」、「塗料によって手形が付けられる」だったという。
いたずらな気持ちから落書きをしたかも知れないが、日本には文化財保護法等が存在し、重要文化財を損壊したり、毀損したり、隠匿したりした者に対して5年以下の懲役か禁錮、30万円以下の罰金に処罰すると規定している(文化財保護法195条1項)。
くれぐれも気を付けていただきたい。