HOME > 法律コラム > 葬儀費用を相続財産から捻出する際の注意事項を弁護士に聞いてみた!
葬儀費用は誰が払うのかーーこの問いについての回答は人それぞれだろうが、選択肢は限られている。まずは喪主。次に家族で均等に負担。少し趣旨とは異なるが亡くなった方の遺産から負担するということも選択肢に含まれるだろう。
さて、正解はというと、葬儀社と契約を交わした人、つまり喪主である。
しかし先ほどの選択肢には払う人ではなく、捻出する方法も含まれていた。では、支払う人は喪主であっても、その費用を故人の遺産から捻出するという方法は法律上問題がないのだろうか。飛渡貴之弁護士に伺った。
そもそも葬儀費用を相続財産から支出するとなると、相続人間での合意が必要となる。遺産分割時に相続人に対して葬儀費用を捻出させることについて合意を求めるのは問題ないことだろうか。
「葬儀費用は、被相続人がなくなってから発生する費用です。しかも、葬儀の規模によって、その費用には著しい差があります。相続人の一人が、300万円ほどかけて盛大に葬儀をした場合に、当然に相続財産から支出するとなると、他の相続人は納得できるでしょうか。葬儀費用は、相続財産から当然に支出するものとは言えません」(飛渡貴之弁護士)
確かに飛渡貴之弁護士の言うとおりである。相続財産からそれほど高額な葬儀費用が引かれれば、他の相続人に遺る財産は減ることになり、明らかな損となるのだ。
しかし、即座にこのように付け加えて頂いた。
「もっとも、一般的に、葬儀は行われるものですし、相続人全員が、葬儀費用に納得しているのであれば、相続人がその相続分に応じて負担するということもよくあることです。したがいまして、葬儀をする前に、相続人間で話し合うことはとても重要ですし、話し合いをするべきです」(飛渡貴之弁護士)
葬儀費用を相続財産から払うことは、良くあることだと話している。しかし、それは生前から話し合っておき、全員に了解を得ておくことが重要だとのこと。もしも、生前にそのような取り決めをせずに、亡くなった後の遺産分割でそのような主張をしても、合意してくれるかどうかはわからないからだ。
これまで遺産から葬儀費用を捻出させる際の注意事項について触れてきたが、それ以上に賢いやり方がある。それは被相続人が、葬儀費用についての遺言書を残すことである。飛渡貴之弁護士も同様のことを言及している。
「被相続人が、葬式をどうするかについて、遺言書に残してくれているとうれしいのですが」(飛渡貴之弁護士)
ちなみに今までの話は葬儀費用に限ったことではない。遺産分割や相続税の納税など問題はもっともっと複雑なのである。人はいつ亡くなるかわからない。事が起こってから対処するのと、事前に対策をしておくのとでは、その後の結果は火を見るよりも明らかだろう。