HOME > 法律コラム > YouTubeでの動画再生や野々村元議員の号泣動画で得られる広告収入の著作権はどうなってるの?
YouTuberをご存知でしょうか?YouTube上で独自に動画を制作・公開し、動画再生によって広告収入を得ている人を言います。
YouTuberではありませんが、先日元兵庫県議会議員の野々村氏の号泣記者会見映像がYouTubeで相当数再生されました。本人にとっては不本意?だったかもしれませんが、配信サイトが広告収入を得ています。
これは元々テレビ局や制作会社等がテレビで配信するために作成しています。
今回はそれをYouTube等で配信し、広告収入を配信元が得ることが、テレビ局や制作会社、野々村元議員や映されている人たちの権利を侵害することにならないのか、今回は寺林弁護士に話を聞いてみました。
今回のようなケースの場合、テレビ局や制作会社の著作権が侵害されているのではないかと疑問を持つ方もいると思います。
しかし、結論からいうと、動画配信サイトがニュース映像を配信したことは、著作権侵害にはなりません。
著作権とは、「言語、音楽、絵画、建築、図形、映画、写真、コンピュータープログラムなどの表現形式によって自らの思想や感情を表現した創作物を排他的に支配する権利」のことです。
テレビ局が作成した映像は、野々村元議員の記者会見の模様を撮影・編集したものであり、「自らの思想や感情を表現した創作物」に該当しません。
著作権法も時事報道が著作権保護の対象にならないことを明文で規定しています(10条2項)。
そのため、元々のニュース映像を流して動画配信サイトが広告収入を得ても、著作権侵害の問題は発生しません。
音楽や映像が権利保護の対象となる場合、それを実演する人の権利も著作権に隣接する権利として保護されます。
しかし、先ほども述べたとおり、野々村元議員の件については、ニュース映像は著作権の保護の対象とはなりませんので、実演者の権利も発生しません。
そもそも、野々村元議員は、何か著作物を実演しているわけではなく、映像の被写体でしかないので、実演家にも該当しません。
一方、野々村元議員の姿が撮影された映像が無断で動画配信されていることから、肖像権侵害の問題が発生するのではないかと疑問に思う方もいるかもしれません。
しかし、報道陣を招き入れて記者会見を行うことを、野々村元議員は承諾しています。そうであれば、自身の記者会見の模様が映像配信されることも認識・理解しているはずですから、肖像権侵害の問題も生じないでしょう。
ただ、野々村元議員に関しては、一部でアニメーションのキャラクターと組み合わせた画像や、プライバシーに関する情報が流出しています。その程度によっては、プライバシー権や名誉の侵害として慰謝料請求の問題が生じる可能性があります。
スキャンダルの渦中にいる有名人・芸能人であっても保護されるべき名誉やプライバシーがあります。著作権等の問題が生じないからといって、過度に揶揄する表現物を作って配信すると、法的な責任を問われることになりかねませんので、注意が必要です。