HOME > 法律コラム > 相続税の税務調査で狙われるのはぶっちぎりで◯◯だった!(松嶋洋)
相続税の税務調査では、ダントツで名義預金が狙われます。
相続税の申告においては、財産の評価が問題になることが多いですが、財産の評価はグレーゾーンが大きいため税務署が是正させることはなかなか大変ですし、何より国税職員は財産の評価に詳しくありません。このため、評価は問題にならない名義預金が税務調査のポイントになることが多いのです。
被相続人の親族の名義などを使った名義預金については、おおむね以下の3つのポイントが問題になります。
1 資金を拠出したのは被相続人か(資金の出捐者)
2 預金口座を管理しているのは被相続人か(管理者)
3 生前、名義人に贈与したと判断できるか(生前贈与の有無)
(1)について。生前に贈与した場合を除いて、預金は口座にお金を入れた人の財産と見るのが常識です。このため、問題になる預金口座に入金したのは誰か、税務調査では厳しくチェックされます。
この点、単に入金状況だけではなく、名義人に名義預金を作れるだけのお金があったかどうかもチェックされます。例えば、年300万円程度の収入しかないのに、1億円の口座がある、というのはおかしいでしょう。このような場合には、収入状況以外の理由を主張する必要があります。
(2)について。自分の口座の管理を他人に任せるということは常識としてはないはずです。名義預金についても、名義人が口座を管理せず、被相続人が管理していたのであれば、被相続人が自由に使えますので、被相続人の口座と見られる可能性が大きくなります。
この管理ですが、国税が重視するのは預金の印鑑です。その印鑑の管理者が誰なのか、厳しくチェックされます。加えて、口座を開設した際の申込書の筆跡なども参考にします。
(3)について。生前に口座を贈与していれば、贈与を受けた人の口座になり、被相続人の口座にはなりません。この点、上記1に関連して、お金を名義人に贈与した上で、名義人が自分で口座にお金を入れたことになるのか、名義預金ができた経緯について調査されます。
なお、生前に贈与したと主張するのであれば、贈与契約書があると非常に大きな証拠になると言われています。贈与税がかからない年110万円の範囲内で贈与すれば大きな節税になりますから、このような贈与を考えるのであれば、契約書を作っておきましょう。
名義預金が相続財産に含まれるかどうか、その立証責任は原則として国税にあります。このため、安易に名義預金と認定することはできませんから、税務調査では、徹底的に戦う姿勢が必要になります。
●執筆:元国税調査官・税理士 松嶋洋 WEBサイト
東京大学を卒業後、国民生活金融公庫を経て東京国税局に入局。国税調査官として、法人税調査・審理事務を担当。国税局を退官後は、税務調査対策及び高度税務に関するコンサルティング業務に従事。