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もしも貴方に前科があり、それが永久に検索結果に表示されるとしたら・・・

検索サイトで自身の名前を検索してみたことはありますか?
名前の近い、知らない人がヒットされたり、
自分のFacebookアカウントが出てくる、というような人が多いのではないでしょうか。

そういった検索結果に、自分に関するプライベートな情報が不当に掲載されていることはあってはなりません。
過去の逮捕歴等も、更生した人にとって、社会復帰への大きな壁となります。
今回は、過去に逮捕歴のある男性が、ヤフーの検索表示結果の表示差し止めを請求した判例についてコラムを提供して頂きました。

数年前の逮捕事実の公表は名誉棄損にはならない!?

判決を先に言うと、名誉棄損にはならないとして男性の請求は棄却されました。

それは何故でしょうか。

男性側は検索結果の表示により、就職ができず、名誉棄損、プライバシーの侵害であるとして
検索結果の表示差し止めと慰謝料など約1100万円の損害賠償を求めていました。

名誉棄損や、プライバシーの侵害は、民法で規定されている「人格権」の侵害にあたります。

この「人格権」ですが・・・

『人格権に基づく差止請求は、不法行為に基づく差止請求権よりも、人格権の侵害という見地において不法性が大きく、それを放置することが社会正義に照らして許容されないレベルの場合にしか認められない』
(Wikipedia「人格権」より http://ja.wikipedia.org/wiki/%E4%BA%BA%E6%A0%BC%E6%A8%A9)

ということだそうです。

判例はその時代や社会の考え方を法律を使って改めてはっきりと示す、道しるべ

社会正義に照らして許容されないレベル、の判定基準が気になるところですね。

この判決で考えてみると、ヤフーの検索結果が表示され続けることが社会正義に照らして許容範囲内にあるかどうかが問われてきます。
許容範囲内でなければ(許容されないレベルであれば)、ヤフーが有罪判決を受け、男性に慰謝料を支払うかたちとなります。

結果的に男性の請求は棄却されたわけですから、ヤフーの検索結果の表示は許容範囲内であったということになります。

それは具体的にどんな基準によるものだったのでしょうか。

判決では次の2点をあげて許容範囲であるとしています。

■男性が犯したのは小型カメラで盗撮したという特殊な犯罪であり、社会的関心が高いこと。
■逮捕から一年半程度しか経過しておらず、公共の利害に関する事実として重要度が高いこと。

この2点によって、男性の逮捕歴や名前は公表され続けてもよい、とされているのです。
男性は検索結果に自身の逮捕歴が表示されることで就職もできない、と起訴する際に述べています。
確かに、自身の履歴(逮捕歴)は1人の人生を左右する非常にデリケートな情報であることは間違いありません。
ですが、それも社会正義に照らして許容範囲内であるということが判決されました。

犯罪というものはそれだけ社会を脅かすものであると、改めてわかる判例ですね。
判例はその時代や社会の考え方を法律を使って改めてはっきりと示す、道しるべのような側面もあるのでしょう。

執筆  ハルノミチ