HOME > 法律コラム > 見に覚えのない疑いで取調べを受ける際、ボイスレコーダーの使用は可能?
2016年5月、取り調べの可視化を盛り込んだ刑事訴訟法の改正が成立した。
元々この法改正は、えん罪事件防止を一つの目的としている。しかし、その可視化の対象は「裁判員裁判対象事件」と「検察独自捜査事件」のみとなっており、それは全事件のたったの3%に過ぎない。
もしも自分がやってもいない事件の犯人だと疑われた場合、どのような自衛が認められているのだろうか。可視化対象の事件でなかった場合、例えば取り調べの際にボイスレコーダーを使用することは認められているのだろうか。森谷和馬弁護士に話を伺った。
「取調は、警察署や検察庁の小さな部屋で警察官や検察官と相対で行なわれるので、普通の人はそれだけで緊張し、威圧感を感じます」(森谷和馬弁護士)
まずはこのように話す森谷和馬弁護士。ちなみに密室で行われることを逆に利用した違法な取り調べが度々起こっているのはご存知だろうか。今年の3月、傷害罪で在宅起訴され、無罪が確定した男性が、大阪府警西堺署から侮辱的な取り調べを受けたとして、大阪府に200万円の慰謝料を求めた訴訟の判決がでている。
森木田邦裕裁判長は「社会通念を逸脱した態様で供述や自白を強い、不当な人格攻撃の発言を繰り返した」と、違法な取り調べを認め、府に100万円の支払いを命じている。
ではもしもやってもいない容疑をかけられ、取り調べを受ける際、ボイスレコーダーで録音しても良いのだろうか。
「理想的には弁護士の立ち会いを求めることですが、ボイスレコーダーなどで取調の様子を録音すると、後で証拠として利用できます。あなたがボイスレコーダーを出せば、相手は嫌な顔をするでしょうが、逮捕されていない限り、録音を止めさせる根拠はありません」(森谷和馬弁護士)
刑事訴訟法第47条には「訴訟に関する書類は、公判の開廷前には、これを公にしてはならない。」と書かれているが、録音すること自体に違法性はないとされているのが一般的だ。
つまり森谷和馬弁護士の言うように、録音をやめさせる権限は相手にないため、遠慮無く使用することができる。幸いにも最近のスマートフォンアプリにはボイスレコーダー機能がついてるものの多い。中々使う機会も多くないかもしれないが、いざというときのためにダウンロードしておくのも良いかもしれない。