HOME > 法律コラム > 「消費税取るの忘れてしまいました!」税込108円の商品を、間違って税抜100円で売った場合の納税額はわかりますか?
「消費税をお客さんから取るのを忘れてしまいました!どうすればいいでしょうか?」
税務署で働いていたころ、ある事業者の方からこういうご相談を受けました。
消費税は、事業者が価格に上乗せして消費者から預かって国に納付するもの、と考えている方が多いですから、このような相談が寄せられるのですが、消費税は取引先から預かるものではない、というのが法律の考え方です。
消費税の法律は、事業者が売り上げた金額のうち、8/108を納税しなければならない、といった形で書かれています。
このため、先の例で行けば、本来税込108円で売ろうとした商品を誤って100円で売ってしまったということになりますが、この場合には7円(≒100円×8/108)の消費税を納めなければならないのです。
もちろん、100円の利益がなければ、この事業者は困りますが、「売値には基本国はタッチしない!」という考えで法律は作られており、上記の例で行けば7円も事業者は損を被らざるを得ない、と結論づけられるのです。
中小企業は消費税を転嫁できない問題の背景には、このような法律の考え方があります。
売値にはタッチしないのですから、消費税率がアップしても、そのアップした消費税を取引先からもらえるか否かは、自社の経営努力次第です。
中小企業は価格競争力が弱いですから、消費税増税が実現したとしても、その分の値上げをすることが困難になり、自社の利益を犠牲にして消費税を納税せざるを得ない、という状況が生まれるのです。
去る平成26年4月からの増税に当たり、国は「転嫁対策特別措置法」という法律を作り、消費税相当額の減額の要求をしたり、買いたたき行為を行ったりすることを禁止しました。
この法律に違反する企業に対しては、立入検査や企業名の公表などを行う、としており、事実、報道を見ていただければ分かるとおり、このような行為を行った企業名の公表なども行われています。
とは言え、この法律は平成29年3月31日までの期限付きですし、どの程度の実効性があるのか不透明な部分も大きいと言われています。
実際のところ、このような法律があっても、売上の大部分を大企業に依存している下請け企業であれば、将来を考えておいそれと値下げ要求を拒否できないでしょう。
むしろ、「消費税は取引先から預かるもの」ときちんと消費税の法律に明記するべきではないか、と考えます。