HOME > 法律コラム > 賃貸オフィスの権利金が典型例となる「繰延資産」の課税関係(松嶋洋)
税務上、繰延資産という資産があります。これは、支出の効果が1年以上に及ぶと認められる一定の費用をいいます。費用ですので、車などの固定資産とは異なり、会社には現物の資産としては残りませんが、効果が1年以上に及びますので、その効果が及ぶ期間に応じて少しずつ費用とするために、便宜上、会社の資産として計上することになっています。
少しずつ費用とする、という点からわかる通り、お金を払っても一時の経費にはなりませんので注意が必要です。
繰延資産の典型例は、事務所などを借りる場合に支払う権利金です。この権利金は、事務所を退去しても家主から返してもらえませんが、賃貸借契約の契約期間などに応じ、月割で費用とする必要があります。
ところで、税務署に提出する書類の中に、地代家賃の明細書という書類があります。この書類には、会社が借りている事務所などの物件ごとに、1事業年度に支払った家賃が書かれます。ほとんどの賃貸借契約は月極めですので、通常は1年分の12で割り切れる金額が書かれます。しかし、例えば更新月などに、更新料を支払うと、その更新料に相当する1~2月などの家賃もそこに書かれることになります。このような更新料についても、原則としては権利金と同様に、繰延資産に当たるとされています。
国税はこの書類をチェックしており、書かれている家賃が12で割り切れない場合、このような権利金が含まれている可能性が大きいとして、税務調査の対象になる可能性がありますので、注意してください。
その他、以下のような費用も繰延資産になるとされています。このようなものを支出すると、一時の経費にはなりませんので、注意が必要です。
公共的施設等の負担金
→商店街のアーケードの設置費用や、会館などの負担金が該当します
役務の提供の権利金等
→フランチャイズの加盟金など、ノウハウ提供を受ける場合に支出する頭金などが該当します。
広告宣伝の用に供する資産を贈与したことで発生する費用
→自社商品の宣伝を兼ねた陳列棚を取引先に贈与する費用などがこれに該当します。
ただし、繰延資産に該当しても、支出金額が20万円未満であれば、一括で経費とすることができます。20万円を超えるような支出については、予め税理士と相談しておくといいでしょう。
●執筆:元国税調査官・税理士 松嶋洋 WEBサイト
東京大学を卒業後、国民生活金融公庫を経て東京国税局に入局。国税調査官として、法人税調査・審理事務を担当。国税局を退官後は、税務調査対策及び高度税務に関するコンサルティング業務に従事。