HOME > 法律コラム > 【ふるさと納税】返戻品の時価が◯◯万円を超えると所得税が課税(松嶋洋)
非常に魅力的なふるさと納税の返戻品ですが、これについても所得税の課税の対象になりますので注意が必要です。
具体的には、返戻品を時価評価して、一時所得として課税されることになります。
クイズ番組の賞金や、趣味として行った競馬の払戻金など、継続的ではない一定の所得は、一時所得として課税されます。継続的ではないことから、一時所得の課税は給与所得や事業所得など、ほかの所得の計算に比して、かなり優遇されています。
具体的には、一時所得は、以下のような特典があります。
(1) 一時所得を得るために直接支出した金額は、控除できる
(2) (1)から控除した金額から、特別控除として50万円控除できる
(3) (2)の残額の2分の1に対し、所得税が課される
注意点としては、上記(1)の支出した金額に、ふるさと納税の寄附額は含まれないとされていることです。このため、寄附した金額を考慮することなく、返戻品の時価が課税対象になります。
以上を踏まえると、1年間でもらった返戻品の金額が50万円を超えるようなケースについて、所得税の申告を検討すればいいことになります。
返戻品の時価といっても、かなり難しいですが、各地方自治体のホームページなどで“○○円相当額”と示されていることが一般的ですから、基本的にはこの金額を基に計算すれば問題ないと考えられます。加えて、返戻品として商品券などを配ることも多いですが、このような場合には額面金額を時価と考えて問題ないと考えます。
明示されていない場合や計算が困難な場合には、税理士などの専門家に相談したり、税務署の確定申告会場(無料)で国税職員の見解を聞いたりすることとしましょう。
一時所得として課税されるとは言っても、50万円を超えるような返戻品を一年で取得するケースは多くないこと、返戻品によっては時価の計算が難しいことなどの理由により、国税が税務調査で課税したという事例は耳にしたことがありません。
しかしながら、ふるさと納税が有用な節税手段として認知されるとともに、高額な返戻品を支給してまで寄附を得ようとするやりすぎの自治体も多いことからすれば、今後は厳しい対応がなされる可能性が大きいと考えられます。
ふるさと納税を活用することは問題ありませんが、返戻品の時価についても考慮した上で、適正な申告に努める必要があると言えます。
●執筆:元国税調査官・税理士 松嶋洋 WEBサイト
東京大学を卒業後、国民生活金融公庫を経て東京国税局に入局。国税調査官として、法人税調査・審理事務を担当。国税局を退官後は、税務調査対策及び高度税務に関するコンサルティング業務に従事。