HOME > 法律コラム > 交通事故における被害者弁護士の役割ってなに?弁護士に話を聞いてみた。
交通事故で怪我を負わせた場合、加害者には自動車運転過失致傷罪や場合によっては危険運転致傷罪に該当し、懲役刑に処される可能性がある。しかしこのような刑罰も、被害者との間に示談が成立している場合では軽くなる可能性がある。
ところが示談交渉の際、加害者には保険会社という強い味方がいるが、被害者にはその時点では誰一人味方はいない。もしもそんな状態で交通事故の示談交渉を独力で解決しようとしても失敗する可能性が高くなるだろう。
では被害者として弁護士に依頼をする場合、具体的にはどのようなことをしてくれるのだろうか。富士見坂法律事務所で代表を務める井上義之弁護士に話を伺った。
「交通事故の被害者は、予期せぬ損害を被り、肉体的・精神的に苦しい状況で加害者側と交渉していかなければなりません」(井上義之弁護士)
「しかも、多くの場合、加害者側には交通事故処理のプロである任意保険会社がつき、プロを相手に交渉していくことになります。ともすれば、加害者側に一方的に有利な内容で示談に応じてしまったり、解決への道筋が見えないまま徒に紛争が長期化してしまうといった事態にもなりかねません」(井上義之弁護士)
まずはこのように話す井上義之弁護士。これは正しくその通りだろう。事故直後の、精神的にも肉体的にも不安定な状況で、プロと対等に交渉していくのは難しいだろう。
では相談を受けた弁護士は具体的にどんなことをしてくれるのだろうか。
「交通事故の被害者から相談を受けた弁護士は、事実関係と証拠関係を整理し、法的な問題点を検討した上で、解決に向けた流れ、ある程度の事故処理の方向性を相談者にお示しします」(井上義之弁護士)
解決に向けた流れ。これがその時点でわかるのであればその精神状態はかなり落ち着くのではないだろうか。では依頼を受けた場合は、その流れに向けて全力で取り組んでもらえるということだろうか。
「被害者から依頼を受けた弁護士は、ご本人の利益や個々のご事情に応じて、最良の結果を目指して代理人として対応していくことになります」(井上義之弁護士)
弁護士を代理人にたてるメリットは大きく分けて5つある。
(1)法的な観点に則ったアドバイスが受けられること。
(2)言いくるめようとする保険会社の態度が変わり、保険会社との交渉がなくなること。
(3)問題解決の目処がたち精神的に楽になれること。
(4)治療に専念できること。
(5)損害賠償請求、慰謝料が増額される可能性が高いこと。
ちなみにこれらは弁護士に依頼しない場合のデメリットと表裏一体である。これらを全て一人で背負うのは困難だろう。
交通事故は、その瞬間まで「まさか自分がそんな目に遭う訳がない」と考えがちだ。いざ、直面した場合に、まずは弁護士に相談するという選択肢を覚えておいて損はないだろう。