HOME > 法律コラム > 子供にだって親を選ぶ権利はある?親権に制限がかかるのはどんなケース?
最高裁判所事務総局家庭局は親権制限事件の新受件数(平成26年1月から12月)が「親権喪失の審判が110件、親権停止の審判が151件、管理権喪失の審判が10件」であったと発表している。
資料を見る限り、平成17年から平成26年までの間のその件数に大きな開きはない。しかし、子が申し立て人だったケースが平成24年には8人しかいなかったことに対し、平成26年には27人になっていることは注目すべきかもしれない。
子供は親を選べないとはよく言われるが、子自らが申し立てをすれば、認められるケースもあるのだ。そこで今回は親権に制限がかかる具体的なケースについて木川雅博弁護士に伺った。
「親権に何らかの制限がかかるのは、虐待やお子さんの財産の浪費など、親権の濫用や親として不適切な行動がある場合です」(木川雅博弁護士)
まずはこのように話す木川雅博弁護士。では具体的なケースではどうだろうか。
「過去の例では、娘に性的虐待を繰り返したケース(親権喪失)、臓器移植が必要な子の臓器移植ネットワーク登録抹消手続を取ったケース(親権停止)、子が受け取るべき生命保険金を自分たちの謝金返済に充てたケース(管理権喪失)などで、親権に制限が加えられています」(木川雅博弁護士)
なるほど。いずれも親権に制限が加えられても仕方がないと思えるものばかりだ。
更に木川雅博弁護士はこのような興味深い話もして頂いた。
「少し前に、乳児の予防接種を拒否した母親の親権を喪失させた審判例がニュースになっていたようです。通常、乳児の予防接種を拒否した事実だけでは親権の喪失までには至らないといえますが、この母親は以前からネグレクトを繰り返した上、里親委託に出されることを防止するための対抗手段として予防接種を拒否したとの事情があります。報道によれば、審判の理由中で『不当な目的で養育態度が著しく不適当。感染症にり患する危険がある上、里親委託にも支障があり、子どもの利益を著しく侵害している』と判断されているようであり、画期的な審判例と言えるでしょう」(木川雅博弁護士)
補足させて頂くと、里親委託に出すためには予防接種をうけている必要がある。つまり里親委託に出させたくないために、予防接種を拒否していたのだ。
そして最後にこのように締めくくって頂いた。
「お子さんのお年玉を預かったまま返さなかったり、罰としておやつを抜きにしたりした程度では親権に制限が加えられることはありませんので安心してもいいと思います。ただ、自分ではお子さんへのしつけと思っていても客観的に虐待に当たる行為は許されませんし、虐待に対しては児童相談所や裁判所も厳しく対処・判断する傾向にありますので、万が一にも親権が喪失・停止されることのないように注意してください」(木川雅博弁護士)
冒頭で子自らが申立人になることも可能だとお伝えしたが、実際はその多くが子の親戚によるものである。もしも親戚内で、子供が虐待されていたり、子供の財産を不当に扱っている親を見つけた場合は、まずは弁護士や児童相談所に相談してみることをおすすめする。