HOME > 法律コラム > 非上場株式の譲渡時価を個人・法人でそれぞれ算定する際のルール
実務上、非常に問題になる税務問題の一つに、非上場株式の譲渡時価の算定があります。客観的な時価がわかる上場株式とは異なり、ほとんど取引されない非上場株式の時価はわかりません。しかし、時価で譲渡しないと法人税や所得税の課税問題が生じますので、どのように評価するべきかが問題になります。
この時価については、法人税や所得税の通達に規定があり、相続税評価額を計算する財産評価基本通達を前提に、一定の調整をすることで計算すれば原則問題にしないと書かれてあります。
実務では、財産評価基本通達を前提に時価を計算することがほとんどですが、非上場株式の相続税評価額の計算上、贈与や相続を受ける者のステータスが問題になります。具体的に申し上げると、非上場株式の贈与や相続を受けた者が、会社を支配することを目的としているとされる同族株主であれば原則的評価方式となり、同族株主以外の株主(少数株主)であれば、特例的評価方式になるとされています。
原則的評価方式と特例的評価方式は、算定される金額に大きな差があり、場合によっては数十倍もの差が生じます。このため、金額が小さくなる特例的評価方式の適用を受けられることが望ましいですが、そのためには、贈与や相続を受けた後の株主の判定で、その贈与や相続を受けた後の株主が少数株主となる必要があります。
相続や贈与の場合、株主の判定は異動後になりますが、譲渡については、譲渡前の株主で判断する場合があります。具体的には、以下の3つのケースです。
1 法人から法人に譲渡する場合
2 法人から個人に譲渡する場合
3 個人から法人に譲渡する場合
このように、法人が関係する譲渡については、譲渡前の株主構成で評価方式を計算することになります。言い換えれば、譲渡前の株主が同族株主であれば、上記のケースについては、原則的評価方式を適用し、高い金額の株価で計算する必要があります。
いずれにしても、法人が譲渡に絡むケースについては、譲渡前が原則と覚えておきましょう。
一方で、個人間の譲渡であれば、相続や贈与と同様、譲渡後の株主構成により評価方式を決定します。このため、譲渡前の株主が同族株主であっても、譲渡後の株主が少数株主であれば、特例的評価方式で大丈夫です。
ただし、財産評価基本通達を準用し、一部特別な計算を行う場合があります。詳細は専門家にお尋ねください。
●執筆:元国税調査官・税理士 松嶋洋 WEBサイト
東京大学を卒業後、国民生活金融公庫を経て東京国税局に入局。国税調査官として、法人税調査・審理事務を担当。国税局を退官後は、税務調査対策及び高度税務に関するコンサルティング業務に従事。