HOME > 法律コラム > 肥満が売りのタレントに、事務所が肥満維持を命令するのは法律上問題なし?
タレントと言ってもお笑いタレントやタレント政治家、デブタレント、評論家などその種類は様々である。しかしどのタレントにも共通していることがある。それはその芸能活動を維持するために、日々努力をしているという点だ。
例えば評論家であれば、ワイドショーから政治番組まで様々な番組に出演する。その為、幅広い分野での情報収集が欠かせないだろう。お笑いタレントならば、一見ふざけているように見えるかもしれないが、その影では笑いを取るための並々ならぬ努力があるに違いない。ではデブタレントはどうだろうか。
デブタレントと聞くと、グルメ番組で見かける機会が多いように感じるが、やはり肥満であることが彼らの芸能活動を維持することにつながるのだろうか。そこで今回は肥満を売りにしているタレントに、事務所側が肥満を維持し続けるように指示することは、健康上の問題を考えた場合、法律上問題がないのかどうか星野宏明弁護士に伺った。
さて早速だが、肥満であり続けることは明らかに健康上よくないと考えられるが、それを事務所が指示するのは、法律上問題ないのだろうか。
「番組出演のために、肥満を維持することは、最終的には本人の意思がなければできないことであり、所属事務所やテレビ局が指示していたとしても、それ自体直ちに違法とはいえないでしょう」(星野宏明弁護士)
なるほど。それに従うかどうか、また実行するかどうかを決める権利が本人にある以上は、たしかに問題ないと言える。
では、もしも事務所やテレビ局からの指示が、本人の意思とは無関係な強制力を持つものだった場合はどうだろうか。
「テレビ局や所属事務所による肥満維持の指示をタレントが事実上拒否できない強い事情があり、かつ、健康を害することが容易に予見できるような内容の出演を強制させていたことをもって、安全配慮義務違反と評価できるかどうかだと思います」(星野宏明弁護士)
やはり、本人が断れないような状況にある場合は、違法となる可能性があるようだ。
前回、「グルメリポーターが番組での過食が原因で健康被害!番組に責任は問える?!」と題してコラムを更新した。
その際、安全配慮義務違反は、労働関係においてのみ存在すると伝えた。つまり委託や請負契約では明文化されていないということだ。しかし契約形態に関係なく、またタレントの意思とは無関係にタレントに健康被害を及ぼした場合、もしくは及ぼす可能性がある場合は安全配慮義務違反に問われる可能性があるとのことだった。
デブタレントは肥満を維持しつつも、健康でなければいけない。いつも美味しそうにモリモリ食べている影には、スポーツジムに通ったり、食事制限をしているのかもしれない。ちなみにデブタレントはグルメ番組だけでなく、最近はダイエット番組にもでているという。健康を気にしながら肥満を維持することの辛さを考えると、そのダイエット番組を機に、デブタレントを卒業するのもありかもしれない。