HOME > 法律コラム > 所得控除となっている配偶者控除が何故金持ち優遇といわれるのか(松嶋洋)
平成29年度改正において、配偶者控除の見直しが争点になると言われています。扶養する配偶者がいる場合、所定の金額の所得控除を受けることができますが、この制度があるため専業主婦を選ぶ妻が多く、女性の社会進出を阻害していると言われています。
改正が実現するかどうかは別にして、配偶者控除などの所得控除は、住宅ローン控除などの税額控除に比して、金持ちを優遇するという大きな問題があることが指摘されています。
所得控除が金持ち優遇になるのは、それが税率をかける前の、所得金額の計算上控除されることになるからです。日本の税金は、所得金額が大きければ大きいほど高い税率になる累進課税制度になっています。
日本の所得税の最高税率は45%、最低税率は5%となっています。このため、例えば38万円の所得控除が認められる場合、最高税率が適用される金持ちは円(=38万円×45%)の減税となる反面、最低税率が適用される低所得者は円(=38万円×5%)しか、減税を受けることができません。
一方で、税額控除は、税率をかけて算出した税額から差し引くものですから、適用される税率に関係なく、誰でも所定の減税を受けることができます。
このように、税率をかける前の所得を減額する所得控除には大きな問題がありますので、できる限り税額控除で対応するべきと言われますが、このように税額控除の範囲を広げることは、給付付き税額控除を導入するための前段階として必要不可欠です。
給付付き税額控除は、社会保険と税の一体改革として言われるもので、所得税の計算上マイナスがでれば、そのマイナスに相当する税額を社会保険の補助金として納税者に返すものです。社会保険の補助金としてマイナスとなる税額を返すことになりますから、金持ち優遇は決して許されず、税額控除として一本化して計算する必要があります。
このような背景がありますので、今後は配偶者控除に限らず、扶養控除などの他の所得控除も税額控除として見直される可能性が大きいと考えられます。今後の動向に注意する必要があるとともに、安易な富裕層の増税につながらないよう、幅広い議論が期待されます。