HOME > 法律コラム > 月イチ納付が原則の源泉徴収を半年に一度にさせる「納期の特例」(松嶋洋)
お給料から天引きされる源泉所得税については、それを徴収する会社が、給料を支払った月の翌月10日までに税務署に納税しなければならないとされています。
しかし、こうなると中小企業にとっては大変になりますので、1月~6月までに支払った給与に対する源泉税は7月10日まで、7月~12月までに支払った給与に対する源泉税は1月20日まで、と半年に1回まとめて納税できる特例があります。これを納期の特例と言います。
納期の特例は、給与を支払う対象者が常時10人未満の会社などに対して認められる制度であり、この特例を受けるためには、予め税務署に申請書を提出する必要があります。この申請書ですが、申請書を提出した月の翌月支給分から納期の特例の効力が発生することになります。
実務上は、法人を設立する際、法人設立の届出と一緒に申請書を提出することがほとんどです。
ところで、納期の特例は給与の対象者が常時10人未満の会社などに認められるものですから、事業がうまくいって従業員を採用し、10人を超えるようになると、建前としては納期の特例の適用を受けることができません。しかし、実際のところは、10人を超えるような会社についても、納期の特例を受けているケースが多くあります。
この理由として、納期の特例は、その適用をやめるための申請書を税務署に提出しない限り、効力を有することになっているからです。このため、要件に該当しなくなっても、取りやめるための申請書を出していなければ、納期の特例の効力は活きることになります。
このことは、税務署の税務調査で給与対象者が10人を超えていることが判明した場合も同様です。国税時代、先輩職員から指示されていたことですが、納期の特例は納税者に大きな特典を与えるものですので、安易に取消しすることはできず、取りやめの申請書を提出するよう依頼することはできても、税務署の権限で取り消すことは原則としてできないのです。
このため、私が以前勤めていた税理士事務所のように、かなりの従業員がいるにもかかわらず、納期の特例の適用を受けていることがあります。ただし、納期の特例を受けているからと言って、自分にとって有利なことだけではありません