HOME > 法律コラム > 「目のやり場に困る公共の場での授乳」ーーそもそもこれ自体に違法性はある?
「電車でしたこともあります」ーーこう話すのはタレントで、二児の母親の熊田曜子さん。ちなみにこの発言は1月27日に放送されたフジテレビ系情報番組「ノンストップ!」で、公共の場での授乳の是非が問われた場面での一コマ。
さて、貴方は公共の場での授乳についてどうお考えだろうか。
よく言われるのは「目のやり場に困る」という意見である。しかしその一方で「子供がお腹がすかせているのだからしょうがない」や「どうしようもないときがある」等、母親とその子供の立場について理解を求める意見も存在する。そこで今回は、公共の場で、授乳ケープを使わずに授乳することに、違法性があるのかどうかを清水陽平弁護士に伺った。
まず前提として上半身が裸の状態で問われる可能性のある罪は軽犯罪法である。
軽犯罪法1条20号では「公衆の目に触れるような場所で公衆にけん悪の情を催させるような仕方でしり、ももその他身体の一部をみだりに露出した者」を「拘留又は科料に処する」として処罰対象にしている。
では授乳ケープを使わずに授乳することが、この軽犯罪法にひっかかるのだろうか。
「基本的に、公共の場所で授乳をしたからといって、授乳中に胸が見えるわけでは必ずしもないことから、違法性がないと考えます。これは授乳ケープを使っているかどうかにかかわりません」(清水陽平弁護士)
ケープの有無は関係なく、そもそも胸が見えないということ自体で、違法性はないと話す清水陽平弁護士。
更に清水陽平弁護士はこのように続ける。
「そして、授乳ケープを使わなくても、胸が見えないようであれば法的には全く問題ないですし、見えたとしても、授乳をすることが『公衆にけん悪の情を催させる』ものとはいえないと思料されるため、軽犯罪法の適用もないだろうと考えます」(清水陽平弁護士)
そもそも「授乳」という行為が、軽犯罪法で規定されている「公衆にけん悪の情を催させる」には当たらないとのこと。
このような公共の場での授乳が議論の的になるのは日本だけでない。
台湾では 台北市内にある博物館で授乳をしていた母親に対して係員は、トイレか博物館の外で授乳するよう指示した。そしてこれがきっかけで、2010年に公共の場での授乳を禁止・妨害してはいけないという法律が生まれた。
ちなみにこれは授乳だけでなく、新春早々に起こった、ある寺院でのベビーカー利用自粛のお願いの問題と根本は同じである。つまり日本は育児に対して不寛容なのである。台湾のように法律を作ってまで解決しなければならない程とは思えないが、かといってこの問題を放置し続けることはもっとよくない。まずは私たち一人ひとりが、これまでの考え方を改めてみることが重要だろう。