HOME > 法律コラム > 塾講師を検討中の大学一年生は必見!授業以外の準備時間に残業手当は付く?
現在、大学では入学式のラッシュを迎えている。当事者である新入生は何かと慌ただしいかと思うが、しばらくすればその生活にも慣れ、次第にアルバイトを探し始める人も出てくるだろう。そこで今回は大学生に大人気のアルバイト「塾講師の給料」について取り上げる。
塾講師は、いわゆる時間給ではなくコマ給と呼ばれる、授業一コマに対して給料を支払うというのが一般的だ。しかし授業をするためには、それなりの準備が必要である。しかし多くの塾ではその準備のための給料を払っておらず、これが度々ニュースになることもある。決められた時間以外の労働には残業代が支給されることが一般的であるが、塾講師のアルバイトも同様だろうか。話を伺ったのは木川雅博弁護士です。
授業以外の準備の時間が残業となるかどうかは、そもそも労働時間外となる必要がある。そこでまずは労働時間とはどのように定義されているか伺った。
「労働時間とは『労働者が実際に労働に従事している時間だけでなく,労働者の行為が何らかの形で使用者の指揮命令下に置かれているものと評価される時間』のことを言います」(木川雅博弁護士)
では授業をするための準備の時間はどのように考えればいいのだろうか。
「学習塾側の指示を受けて授業の事前準備のために授業開始時刻の15〜30分前の教室入室をしたり、授業後に30〜60分程度の作業をする場合は,すべて労働時間として本来賃金が支払われなければなりません。ただし、講師として標準的に期待される知識不足のために自宅で自習・予習した場合など、使用者の指揮命令下に置かれているものと評価されない準備時間は労働時間に含まれません」(木川雅博弁護士)
塾の講師としての能力に欠け、それを補うために使われる時間は労働時間にはならないという。
さて授業の前後の時間も労働時間とみなされた場合、その時間はコマ給という考え方からすると労働時間外となるが、この分は残業手当が付くと考えていいのだろうか。
「企業は、労働者に対して、所定労働時間外の労働時間については残業代を支払わなければなりません。学習塾に多く見られるいわゆる『コマ給』の場合も、コマ当たりの給料をコマの時間で割れば所定労働時間を計算することができますので、計算の結果、所定労働時間外に労働をしていた場合には残業代を請求することができます」(木川雅博弁護士)
なんと授業時間以外の準備のための時間については残業代として請求できるという。
厚生労働省が2015年11月に「大学生等に対するアルバイトに関する意識等調査結果について」という調査結果を発表した。そこには、学生アルバイトのトラブルで最も多いものの1つに「準備や片付けの時間に賃金が支払われなかった」と述べられていた。
これはまさしく塾講師にも当てはまるだろう。
アルバイトでも労働条件については書面で交付しなければならない。つまり交付されないようなケースにこそトラブルがつきものとなる。もしも今後塾講師に限らず、アルバイトを探すのであれば、この労働条件が纏められた書面が交付されるかどうかはチェックしておいたほうがいいかもしれない。