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「健康診断を受けない従業員にはペナルティ」という制度は法律上問題ない?

従業員の健康管理を重視する「健康経営」を取り入れる企業が増加している。中でもロート製薬は、4月3日に2020年に向けて、健康経営の目標値を設定するという取り組みを発表した。具体的には生活習慣病予防や、女性特有の低体重や貧血に関連した目標値などがあった。その他、残業時間や有給取得率なども盛り込み、ライフワークバランスに関しても評価していくという。

さてそんな中でローソンは2013年度から、健康診断を受けない社員とその上司の賞与を減額するという一風変わった制度を導入している。導入したキッカケは、当時の最高経営責任者だった新浪剛史氏が、立て続けに従業員の葬儀に参列し、遺族の境遇に触れたことだという。仕事を続けられなくなる社員を減らすためだというが、健康診断を受けないことで何かのペナルティを課すことは法律上問題ないのだろうか。清水陽平弁護士に伺った。

会社には従業員に健康診断を受けさせる義務が存在し、従業員もそれを受ける義務がある

そもそも会社は従業員に健康診断を実施しなければならないという法律はあるのだろうか。

「労働安全衛生法(労衛法)という法律で、事業者は、労働者に対し、医師による健康診断を行わなければならないとされており(66条1項)、実施しなければならない診断項目も決められています。実際には、多くの会社が健康保険組合に委託して実施しています。会社勤めの方は、年に一回、健康保険組合が実施する定期健康診断を受診されていると思いますが、これが労衛法で義務づけられた健康診断です」(清水陽平弁護士)

では従業員はそれに対して、健康診断を受けなければならないという義務は法律上存在するのだろうか。

「従業員側にも、法律上、健康診断の受診義務があります(労働安全衛生法66条5項)」

会社は健康診断を受けさせる義務があり、従業員にはそれを受ける義務があるという。

実際の裁判でも健康診断でレントゲンを拒否したものに減給処分がなされた

会社が従業員に対して、健康診断を受けさせる義務を怠れば、違反に問われる。ということは従業員もそれに応じなければ、当然何かの罰則が発生してもおかしくないと考えるのが自然かもしれない。

「会社は、従業員に対して、業務命令として健康診断の受診を命じることができると考えられます。従業員が命令に反して健康診断を受けなければ、会社は懲戒処分を科すことも可能です。実際の裁判でも、健康診断でX線検査を拒否した者に対する減給処分が有効とされた例があります」(清水陽平弁護士)

何と実際の裁判でも受診拒否をしたものに減給処分がなされたという。ではローソンの様に、賞与をカットするということも、法律上問題ないということだろうか。

「会社は、従業員の安全に配慮しなければならない義務があり、従業員も業務にあたり自分の健康を保持する義務があります。こうした義務を果し、従業員の安全と健康を守るためにも、健康診断の実施が必要です。程度にもよりますが、健康診断を受けない従業員の賞与を減額するもの合理的な額であれば、やり過ぎとは言えないでしょう」(清水陽平弁護士)

健康経営に力をいれる企業は今後増えていくかもしれない

冒頭で述べたロート製薬は健康経営に前向きに取り組む従業員には、その対価として「プラスワン休暇」という制度を導入している。具体的には、有給休暇を4日連続で取得した場合に、更にもう1日の休暇を会社が付与するという内容だ。

ロート製薬とローソン。それぞれ違ったアプローチではあるが、いずれにしても健康経営に取り組む企業の目的は「従業員の健康管理を率先して行い、企業としての生産性を上げること」だ。今後、健康経営を取り入れる企業が増えれば増えるほど、それに対する何かしらの賞罰を組み込む企業が増えるかもしれない。

取材協力弁護士  清水陽平 事務所HP
東京弁護士会所属。法律事務所アルシエン共同代表パートナー。ネット上での誹謗中傷対策や炎上対策として、日本人では初となるTwitterやFacebookへの削除・開示の実績あり。その他に損害賠償、刑事告訴など幅広い案件に対応。また数々のメディアへも掲載多数。

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