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「仮眠は労働時間」ならば、その他の「◯◯休憩」は法律上どうなるの?

イオンの関連会社に勤める52歳の男性が、宿直の仮眠は勤務時間にあたると主張し、未払い残業代の支払いを求めていた裁判の判決が今月17日にでた。男性は2011年に入社し、イオンのスーパー内での警備を主な業務としていた。問題となった勤務時間や仮眠については、判決によると2013年1月から8月の間に、24時間勤務・30分休憩・4時間半の仮眠時間があったとのこと。これについて原告側は「仮眠時間でも制服を脱がず、異常があった際はすぐに対応できる状態を保ったままの仮眠で、業務から解放されなかった」と主張。それに対して小浜浩庸裁判長は「労働からの解放が保証されているとは言えない」として、原告の請求をほぼ認め、約180万円を支払うよう同社に命じた。

何かあればすぐに対応出来る状況でなければならない仮眠は、「休憩ではなく労働」ということが今回の判決のポイントとなったが、こういった問題以外にも例えば勤務時間中のトイレ休憩や、化粧直しの休憩、外勤営業中の単なる休憩などは、法律上、休憩時間とみなされるのだろうか。この問題について星野宏明弁護士に話しを伺った。

そもそも法律上、休憩時間とはどのように定義されているのか

まずは休憩時間とは、そもそも法律上どのように定義されているか伺った。

「使用者は、労基法により、労働時間が6時間を超え8時間以内の場合は少なくとも45分、8時間を超える場合は少なくとも1時間の休憩時間を与える義務があります。この休憩時間とは労働者が労働から離れることを保障された時間でなければなりません。したがって、労働者の行動の自由があり、急な業務対応や呼び出し等に応じて労務提供する必要がない状態が必要です。休憩時間は、同じ職場における全従業員に一斉に与えるのが原則です」(星野宏明弁護士)

冒頭で触れた「警備業務の仮眠は労働時間」の判決と照らし合わせても納得できる内容だ。では労働時間とみなされ難い、休憩をとっている労働者に対して、使用者は休憩をやめさせるように命令をすることは可能なのだろうか。

「賃金が発生する労働時間内は、従業員は使用者の労務指揮権に服することになります。したがって、持ち場を離れている者に対し、職場に復帰し、労務に従事するよう求めることができ、従業員はこれに従わなければなりません」(星野宏明弁護士)

トイレ休憩や化粧直しの休憩、外勤営業の車中や公園での休憩は?

では、トイレ休憩や化粧直しの休憩、外勤営業の車中や公園での休憩などは、休憩時間としてみなされるのだろうか。もしもみなされない場合、やはり、それをやめさせることが出来るということだろうか。

「これらは休憩する人とそうでない人の考え方が分かれるため、線引きが難しい問題です。トイレ休憩は、従業員の健康保持に必要ですから、これを拒否することは違法でしょう。もっとも、休憩時間以外にトイレに籠って昼寝をする、ゲームをする、おしゃべりをするなどしている場合は、労務に復帰するよう指示をすることができます」(星野宏明弁護士)

線引が難しい問題であるという前提ではあるというが、トイレ休憩は、トイレだけを目的としているのであれば休憩とみなされるという。

「化粧直しは、業務上、接客対応に必要であれば、やめさせることは難しいでしょうが、退勤後のための化粧直しであれば,やはり労務指揮権に服すると考えられます。外勤営業中は、取れそびれた休憩である場合は,これを制限することは難しいでしょう。サボタージュと評価できる程度の怠業であれば、懲戒処分などの対象となります」(星野宏明弁護士)

これまでをまとめると、その行為が賃金が発生する休憩かどうかを分けるポイントは「その行為が業務上必要かどうか」、「健康維持のための必要最低限の行為かどうか」、「いつでも業務に復帰できるような状態かどうか」という三つになるのかもしれない。

まとめ

さてこれまで法律上の休憩時間について述べてきたが、勿論誰にだって業務中に在席しながらお茶やコーヒーを飲んで、一息つくことはあるだろう。また、少しの時間目をつぶって休む程度のことはあるのではないだろうか。しかしそれを法律上定義された休憩時間と言えないのは、そういった時間であっても、業務の対応はしなければならないからだ。

ただし、無意味なトイレや化粧直しの休憩は、その程度にもよるが、休憩とは認められない可能性が高いことが、今回の星野宏明弁護士の話でわかった。

もしも読者の中に心当たりがある方は是非気をつけて欲しい。何故なら最悪の場合、就業規則上、何かしらの懲戒処分を受けてしまう可能性もあるからだ。

あなたはどんな◯◯休憩をとりがちだろうか?

取材協力弁護士  星野宏明 事務所HP
東京弁護士会所属。星野法律事務所 共同代表。千葉県立東葛飾高校を卒業。早稲田大学法学部を大学院飛び級のため退学。その後慶応義塾大学大学院法務研究科を修了。北京大学へ語学留学し、中国広州市にある敬海法律事務所にて実務研修。弁護士法人淀屋橋・山上合同 勤務を経て独立開業。一般企業法務,顧問業務,中国法務,不貞による慰謝料請求,外国人の離婚事件,国際案件,中小企業の法律相談,ペット訴訟等が専門。中国語による業務も対応可能。