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上場株式の順位が格上げされた物納 株価下落しても相続発生時の評価額でOK

平成29年度改正においては、物納について大きな改正が実現しています。物納とは、文字通り税金をお金ではなく物で納めることを言いますが、この物納については相続税についてのみ認められています。

ただし、物納については、国税にとってはあまりうれしい制度ではありません。お金で納付してもらう場合に比して、融通が利かないからです。このため、物納できる財産の種類や、物納できる財産のうち優先的に物納すべきもの(物納財産の順位)について、かなり厳格な定めが設けられています。

平成29年度改正において見直しが図られたのは、上場株式についてです。

上場株式が物納しやすくなった

物納財産の順位は、現状以下となっており、上場株式については不動産と同じく第一順位になりました。

第1順位 不動産、船舶、国債証券、地方債証券、上場株式等
第2順位 非上場株式等
第3順位 動産

従来、上場株式の順位は第一順位ではなく、第二順位でしたが、それが繰り上がることになりました。

物納の優位性

ところで、物納は納税者にとって有利な側面があると言われます。それは、物納財産の金額は、納付時の金額ではなく申告する金額でOKとされている点です。ここでいう申告する金額は相続発生時の評価額を意味しますから、物納が認められるまでに評価額が下落したとしても、下落前の相続発生時の評価額で納付したことになります。

具体例を申しますと、納付すべき相続税が1000、上場株式の相続発生時の評価額が1000、物納が認められた場合の上場株式の評価額が500とした場合、納付する段階では500の価値しかないにもかかわらず、1000を納付したとされる、ということです。

上場株式は値下がりのリスクも大きいですから、物納順位が上がることでこの値下がりのリスクもかなり軽減されるのではないかと期待されています。

物納のハードルは極めて高い

ただし、物納のハードルが極めて大きいことは従来とは変わりません。延納(毎年一定額ずつ数年で金銭納付する)が認められないような、極めて納税が難しい場合に限って物納は認められるとされていますので、仮にたくさんの上場株式を持っていたとしても、それだけで物納が認められるとは限りません。

物納の改正は納税者にとって有利なものですが、万一の場合にしか使えない制度であることも自覚した上で、慎重に対応する必要があると考えられます。

専門家プロフィール

元国税調査官の税理士 松嶋洋
東京大学を卒業後、国民生活金融公庫を経て東京国税局に入局。国税調査官として、法人税調査・審理事務を担当。現在は税理士向けのコンサルティングを中心に118ページにも及ぶ税務調査対策術を無料で公開するとともに、法律論や交渉術に関する無料メルマガを配信中。

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