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自殺によって起こりえる3つの経済的負担や訴訟リスクを弁護士が解説!

諸外国と比較しても自殺者数が多い日本。
主要国G8、OECD加盟国、双方で日本は上位です。特に年代別で見ると、男性中高年層はトップレベルです。

自殺は日本で、主要な死因となっています。

今回は自殺によって考えられる、遺族の経済的負担や訴訟リスクを蓮見和章弁護士に聞いてみました。

電車への飛び込み自殺の場合、どんなところから訴えられ、どのくらいの損害賠償が発生するのでしょうか。また、誰が損害賠償を支払うのでしょうか。

線路内やホーム上での列車との接触や踏切事故などの電車に関わる人身事故の場合、列車を運行する鉄道会社、またその電車に乗っている乗客から損害賠償請求される可能性があります。

鉄道会社は、その電車を緊急停止させることになりますから、その代りの振替輸送費や乗車券の払戻し、キャンセル料、車両や線路等の修理費や事故の対応にあたった社員の人件費等広範囲にわたって損害が発生する可能性があり、その額は場合によっては数千万から1億円に達するケースもあります。もっとも鉄道会社自身は保険に入っているので、これらの損害は保険によって賄われるケースも多いです。

また、電車に乗っていた乗客も、電車の遅延に伴う損害が認められる可能性がありますし、電車の緊急停止等により怪我をした場合は、その治療費はもちろんのこと、入通院で会社を休んだ場合の休業損害や慰謝料を請求される可能性があります。

後遺障害がある場合、損害額はさらに高額になると思います。

これらの鉄道会社や乗客に生じた損害は、原則として人身事故を起こした本人が生きていれば本人ですが、本人が亡くなっていればその相続人が損害賠償責任を負わなければなりません。もっとも、相続人が相続を放棄すれば、責任は免れることになります。

賃貸アパートで一人暮らしをしている方が首を吊ったり、薬物等で自殺した場合、どれくらいの損害賠償が認められるのでしょうか。また、レンタカーを借りて練炭自殺した場合はどうでしょうか。

賃借人が、賃貸物件内で自殺をした場合には、大きく分けて、原状回復費用と相当期間の賃料減収分が損害として認められると思います。なお、これらの賠償責任は相続人だけでなく、賃貸借契約の連帯保証人にも認められるので注意が必要です。

まず原状回復費用に関してですが、法律上は、通常の使用で生じた損耗に関しては、原状回復する必要がありませんが、首を吊って体液等が床や壁・天井等に付着したり、浴槽内でリストカットした場合などは、張り替えや浴槽の交換代が必要になりますので、これに要する費用が損害として認められます。その意味で薬物自殺の場合は原状回復費用が多額になることはあまり想定されないかもしれませんが、一酸化炭素中毒での自殺の場合には、高額の損害賠償が認められる可能性はあります。

次に賃料減収分ですが、これは自殺のあった部屋に好んで入居する者はいないことから、自殺のあった部屋は他の部屋に比べて人気がないので、空室の期間が続きやすいし、入居者が見つかっても賃料が低額になるので、通常の賃料で入居が続いた場合との差額分が損害として認められます。

もっとも、建物が存続する間ずっと損害が認められるわけではなく、裁判例では、相当期間分(概ね約1年前後の賃料全額分とその後約2年程度の賃料半額分)だけ損害として認めています。

レンタカーの場合も車の賃貸借契約なので家の場合と同様に考えられますが、車の場合はもう使用ができないとして自殺時点の車の価値全額が損害となるケースもあると思います。

マンションの一室での自殺や、マンションから飛び降り自殺した場合に、そのマンションに住む住人からの慰謝料請求は認められるのでしょうか。

原則として慰謝料は認められないと考えられます。自殺行為によってマンションの設備やマンション内にある他人の物が破損された場合はその損害の賠償を請求することができますが、心理的なダメージに対する慰謝料については裁判例で認められているケースは少ないです。住んでいたマンション内で自殺があると精神的に平穏な生活はなかなかではないと思いますが、その精神的なショックと自殺行為との因果関係やその精神的苦痛の度合を立証するのが裁判ではなかなか難しいのです。

自殺行為に直接巻き込まれたりした場合であれば慰謝料請求できる可能性もあるかもしれないですが、単に同じマンションに住んでいただけでは慰謝料の請求は難しいと思います。

取材協力弁護士

蓮見和章 弁護士法人リーガルジャパン 広島事務所 Blog
広島弁護士会所属。全国各地に安定感のあるリーガルサービスを提供するために東京、大阪、広島市と呉、山口に事務所を展開。企業法務・一般民事・家事事件・刑事事件等、様々な案件を幅広く対応。

ライター  ゆきんこ