HOME > 法律コラム > 相続税対策で不動産の購入を検討している方が注意すべき「3年内取得の特例」
報道などでよく言われることでもありますが、相続税対策として、手持ちの現金預金を使って土地や建物を購入すると都合がいいです。この理由は、現金預金は相続開始時点の金額そのままで評価され、相続税が課されるのに対し、土地や建物は原則として土地は相続開始時点の8割、建物は7割くらいで評価され、相続税が課税されます。
このため、例えば1億円の現金を持っている場合、土地を購入するだけで2千万円くらいは評価額を下げることができます。
もちろん、このような節税が幅を利かせると、国税としては面白くはありませんので、相続開始の直前にたくさんの土地建物を購入したり、高額な土地建物を購入したりする場合には、あからさまな節税として国税から問題視される可能性があります。このため、このような節税は、税理士と相談しながら、あからさまでない範囲で、慎重に行う必要があります。
ところで、このような節税方法は、同族法人を有している場合にも適用することができます。同族法人の株式を有している場合、その株式に対して相続税が課税されますが、その評価方法は、純資産価額方式などの方法によって評価することになります。
純資産価額方式とは、同族法人が持っている資産や負債を、相続税の財産評価を基に評価した金額をベースに株価を計算する方法をいいます。このため、仮に同族法人が土地や建物を持っているのであれば、原則として上記と同様に、8割ないし7割で評価することになります。このように評価されれば、同族法人の資産を少なく評価することができますので、株価対策としても、同族法人で土地や建物を取得すると望ましい、と言われます。
ただし、同族法人の株式について純資産価額方式で計算する場合には、押さえておくべき規定があります。それは、相続開始前3年以内に取得した土地建物については、相続税の財産評価ではなく、取引される時価で計算されるということです。
この規定が適用されると、せっかく買った土地や建物について、同族法人の株価を下げる効果はないことになります。困ったことに、相続が開始するタイミングを選択することはできませんので、株価対策として安易に土地や建物を同族法人で購入することは、リスクもあるのです。
元国税調査官の税理士 松嶋洋
東京大学を卒業後、国民生活金融公庫を経て東京国税局に入局。国税調査官として、法人税調査・審理事務を担当。現在は税理士向けのコンサルティングを中心に118ページにも及ぶ税務調査対策術を無料で公開するとともに、法律論や交渉術に関する無料メルマガを配信中。