HOME > 法律コラム > 地方公共団体の計算ミスで過大納付していた固定資産税を取戻す方法を税理士が解説
過去に申告を間違えてしまったため、税金を過大に納付した場合などは、一定の要件に該当すると更正の請求という手続きにより、その過大に納付した税金の還付を請求することができます。この手続きの際、押さえておくべきは、原則として税金の還付の時効は5年とされていますので、それより前の過大納付税金の還付はできないということです。
自分が間違った申告をして税金を過大に納付した場合には、責任は自分にありますのでこのような取扱いであっても文句は言えませんが、近年大きな問題になっているのは固定資産税です。固定資産税の計算は、地方公共団体が行う訳ですが、その計算のミスが非常に多く、結果として過大に固定資産税を納付させられ続けている、このような事態がよく見られます。
このようなミスが起こる理由は、固定資産税の基礎となる家屋などの評価方法が非常に複雑で難しいだけではなく、地方税の担当者が数年で異動をするため、専門性に優れた職員が育たないという地方公共団体の人事制度の問題があるからです。
地方公共団体の計算ミスで生じた固定資産税についてですが、固定資産税も税金である以上は、5年間の消滅時効の対象になるのが原則です。計算ミスをしておいて5年しか返さない、というのは横暴ですが、その横暴が認められるのが怖いところです。
このような横暴に対し、近年有効な制度となり得るとして注目されているのが国家賠償請求訴訟です。国家賠償請求は民法上の不法行為に係る損害賠償請求の公的機関版ですが、民法上の不法行為に係る損害賠償請求は、その時効が20年とされています。20年の時効ということは、20年分の請求が可能になるという訳で、この制度を使って、地方公共団体から税金を取り戻そうとする動きがあります。
実際のところ、このような請求が認められた最高裁判決(平成22年6月3日判決)があります。この判決では、公務員が納税者に対する職務上の法的義務に違背して当該固定資産の価格ないし固定資産税等の税額を過大に決定したときは、これによって損害を被った納税者は、すぐに国家賠償請求を行い得るとしており、課題徴収額の20年分の返還を認めています。
もちろん、国家賠償請求のハードルは非常に大きいため、明らかな手抜きがあるような特集な場合についてのみ認められます。結果として、国家賠償請求を行おうとする場合には、この点弁護士などと予め慎重に検討する必要があります。
元国税調査官の税理士 松嶋洋
東京大学を卒業後、国民生活金融公庫を経て東京国税局に入局。国税調査官として、法人税調査・審理事務を担当。現在は税理士向けのコンサルティングを中心に118ページにも及ぶ税務調査対策術を無料で公開するとともに、法律論や交渉術に関する無料メルマガを配信中。