HOME > 法律コラム > 時効って何であるの?時効って何で罪によって違うの?
NHKが受信料滞納分を、いつまでさかのぼって徴収できるかが争われた訴訟で、NHKは10年と主張していましたが、最高裁は消滅時効を5年とする初判断を示しました。
ちなみに通常、借金は5年、または10年が時効とされています。
その他に病院の治療費は3年、保険料請求権は1年、退職金は5年、海難救助料は1年、弁護士報酬は2年など。
今回は民事に関する時効について星野弁護士に話を聞いてみました。
時効には,事実状態が一定期間経過すると権利を取得できる「取得時効」と,一定の期間権利を行使しないと権利が消滅する「消滅時効」の2種類あります。
このうち,最も長い取得時効は,他人の権利であることにつき知っていた場合または知らなかったと過失がある場合の20年です。
意外かもしれませんが,他人の物と知っていても,所有する意思をもって平穏公然と占有すれば,20年間で所有権の取得時効が完成します。
なお,他人の物であると過失なく知らなかった場合は,10年の占有で所有権を取得できます。
取得時効には,長期取得時効(20年)と短期取得時効(10年)の2種類しかありません。
他方,消滅時効については,最長が20年で,債権と所有権以外の財産権が対象です。
例えば,永小作権や地上権を保有しているにもかかわらず,20年間これを行使しないと,権利が時効消滅します。
民法上の消滅時効で最も短いのは1年で,運送賃,旅館の宿泊料,飲食店の代金等が対象です。
身近なところでは,給料債権も2年の短期時効となりますので,注意が必要です。
実務上,残業代請求をする場合に,証拠があっても,過去2年分しか請求できず,時効が壁となって法的救済を受けられないケースをよく目にします。
退職してから未払残業代を請求しようとしていると,全額請求できないことも多いです。
時効制度が存在する理由は3つあると言われています。
1つは,永続した事実関係の尊重です。長年継続した事実状態がある場合,それを前提に人が行動し,取引や法律関係が重なるため,長期間経過してからいきなり事実状態がひっくり返されると,法律関係が不安定となります。
法律関係が不安定でも,権利がある以上,それに従うのが本来の姿ですが,あまりに長期に亘って事実関係が永続した場合には,法律関係の安定をより重視しようという発想です。
2つ目は,証拠の散逸です。長期間経過すると,本来の法律関係を示す証拠が散逸し,正しい法律関係を判断することが困難になります。
例えば,20年も前の契約の代金支払いを求められても,20年前の契約書や領収書を保管していなければ,契約代金や支払いの有無について反論することは不可能なので,消滅時効によって立証の困難を救済しようということです。
3つ目は,やや理念的ですが,権利の上に眠るものは保護しない,という法諺に基づく考えです。
債務者は,消滅時効であれば,債務が消えますので,利益を得られます。
ただし,時効消滅の場合でも,債務滞納という事故情報が信用情報機関に登録される可能性はあります。
債権者は,自らの権利を行使できない分,損をすることになりますが,それ以上の社会的な不利益は特にありません。
弁護士 星野宏明(東京弁護士会)
千葉県立東葛飾高校 卒業
早稲田大学法学部 退学(大学院飛び級のため)
慶應義塾大学大学院法務研究科 修了
北京大学へ語学留学(中国語による業務可能)
敬海法律事務所(中国広州市)にて実務研修
弁護士法人淀屋橋・山上合同 勤務を経て独立開業
星野法律事務所 共同代表
事務所HP:http://hoshino-partners.com/
一般企業法務,顧問業務,中国法務,不貞による慰謝料請求,外国人の離婚事件,国際案件,中小企業の法律相談,ペット訴訟等が専門