HOME > 法律コラム > 愛媛県津島市が国税から指摘され発覚した課税漏れの経緯を元国税が解説
先日、愛知県の津島市が国税の調査を受け、356万円の消費税の課税漏れを指摘されたという報道がなされました。
この報道だけでは、なぜ津島市が課税されるのかよく分かりません。この背景には特定収入という消費税における特別な取扱いがあります。
特定収入とは、公益法人や地方公共団体の消費税を計算する際に問題になる収入で、具体的には補助金や租税収入などの収入で、消費税が課税されない一定の収入をいいます。公益法人や地方公共団体は、補助金や租税収入を得ることが多いですが、ここで問題になるのはこれらの収入は、消費税が課税されないということです。
例えば、ある公益法人が補助金を収入して、その補助金を基に建物を建てる場合、収入に対する消費税は0であるにもかかわらず、建物には消費税が課税されますので、その消費税については還付の対象になります。株式会社など、補助金などをもらうことが少ない法人であればあまり問題になりませんが、公益法人などは頻繁に補助金をもらいますので、このような状態を放置するのは望ましくないことから、特定収入の調整が設けられているのです。
具体的には、公益法人や地方公共団体などについては、その年度において収入する特定収入の割合が一定の割合を超えると、経費となる消費税額から、原則として特定収入の金額に8/108した金額を差し引くことになっています。言い換えれば、補助金や租税収入などから支出した部分は、消費税の経費としてカウントしない、このような取扱いになります。
冒頭の津島市は、特定収入に当たる一般会計からの繰入金について、この特定収入の調整計算を失念していたようです。
特定収入の計算は、上記のように適用を忘れることが多いことに加え、その計算自体も実は非常に複雑で、税理士もあまり詳しくありません。このため、対象になる公益法人や地方公共団体が消費税の申告をする場合には、税務署などに事前に相談した方がいいでしょう。税務署に相談しても、お金はかかりません。
なお、私が以前勤めていた税理士法人に所属するOB税理士のように、この計算に詳しくないのに詳しいと宣伝する悪質な税理士も存在しますので、注意してください。
元国税調査官の税理士 松嶋洋
東京大学を卒業後、国民生活金融公庫を経て東京国税局に入局。国税調査官として、法人税調査・審理事務を担当。現在は118ページにも及ぶ税務調査対策術を無料で公開し、税理士を対象としたコンサルティング業を展開。