HOME > 法律コラム > 不動産投資家が法人化するなら所有型法人方式が有利である理由を税理士が解説
前回、不動産投資家の法人化について解説しましたが、そのうち節税の観点から最も進められているのは、新設する法人に不動産の所有権を移転する所有型法人方式です。この方式が望ましい理由としては、法人に最も多くの所得を移転できるからです。
法人化が節税になるのは、個人では分散できない所得を法人に付け替えることで、他の家族をその法人の役員とすることで、その法人から給与と言う形で所得を他の家族に分散することができるからです。となれば、法人でたくさんの所得があればあるほど分散の効果が上がるため、法人化の際は、どのくらいの利益を法人に移転できるかが問題になります。
所有型法人方式は、法人が自分で資産を所有するため大きなリスクを法人が負っています。結果として、そのリターンである所得についても、たくさん法人で収入できるとされるのです。
管理委託方式については、実際のところ、ほとんど法人に利益を移転できないとされています。と言うのも、外部の管理会社を使う場合を想定していただければと思いますが、賃料のうち5~10%程度しか管理料としては支払わないはずです。となれば、自分で管理会社を作ったとしても、その程度くらいしか移転できないと考えられています。
実際のところ、管理委託方式については、管理料の水準が高すぎるとして国税が問題にした事例がたくさんあります。このため、具体的な管理料については、税理士の意見も参考にしながら、慎重に設定する必要があります。
サブリース方式についても、実際のところはあまり利益を法人に移転できないと言われています。相続対策などの観点から、不動産会社が投資家が相続対策で建築した物件をサブリースする、ということが近年見られますが、この場合のサブリース料は、概ね15~20%程度と言われています。となれば、自分で作る法人についても、この範囲に収める必要があると言われます。
こういう訳で、節税と言う観点からは、所有型法人方式が有利と結論付けられますが、この方式のデメリットとして、不動産の名義が変わるため、登記費用や賃貸借契約のまき直しの手間がかかるということが挙げられます。
このあたり、おざなりにはできませんので、しっかりと対応する必要があります。
元国税調査官の税理士 松嶋洋
東京大学を卒業後、国民生活金融公庫を経て東京国税局に入局。国税調査官として、法人税調査・審理事務を担当。現在は118ページにも及ぶ税務調査対策術を無料で公開し、税理士を対象としたコンサルティング業を展開。