HOME > 法律コラム > 従業員にお金を貸し付けたことで得られる利息の課税関係を税理士が解説
前回も申し上げましたが、無償で従業員にお金を貸すことも原則として経済的利益に該当します。具体的には、役員又は使用人に金銭を貸し付けた場合、その利息相当額は、次に掲げる利率によって計算され、その計算した利息の額と実際に支払う利息の額との差額が、原則として給与課税されることになります。
(1) 会社が他の銀行などから借り入れて貸し付けた場合・・・その借入金の利率
(2) その他の場合・・・貸付けを行った日の属する年に応じ、一定の利率
※平成29年中に貸付けしたものは、1.7%
ただし、上記の例外として、以下のいずれかの場合は、貸付利息による経済的利益について給与課税はなされません。
(1) 病気などで臨時に多額の生活資金が必要となった役員又は使用人に対して、それに充てるため、合理的と認められる金額や返済期間で金銭貸し付ける場合
(2) 会社における借入金の平均調達金利など合理的と認められる貸付利率を定め、この利率によって役員又は使用人に対して金銭を貸し付ける場合
(3) (1)及び(2)以外の場合で、上記の利率により計算した利息の額と実際に支払う利息の額との差額が1年間で5,000円以下である場合
ところで、上記のように従業員や役員などに対する貸付利息による経済的利益について給与課税される場合、貸付を実行した会社に対しては、その経済的利益に相当する利息を収入金額として認識するとともに、給与として支給したという処理を行う必要があります。例えば、無償で役員に対して貸付を行っており、上記で計算される適正な利息が100とすれば、会社は以下の処理を行います。
給与 100 受取利息 100
上記の給与に関しては、源泉徴収の対象になりますが、給与とされる金額については、それが役員に対するものであっても、原則として会社の経費として認められます。このため、会社において法人税が発生することは原則としてありません。
上記とは逆に、個人である役員や従業員が会社に無償でお金を貸しても、経済的利益は発生しないとされています。お金を貸す側が個人か法人かで処理が異なりますので、注意が必要です
元国税調査官の税理士 松嶋洋
東京大学を卒業後、国民生活金融公庫を経て東京国税局に入局。国税調査官として、法人税調査・審理事務を担当。現在は118ページにも及ぶ税務調査対策術を無料で公開し、税理士を対象としたコンサルティング業を展開。