HOME > 法律コラム > 相続税節税で法人化するなら株式保有特定会社と土地保有特定会社には要注意
法人化を活用して相続税の対策を行う、という手法はよく知られていますが、その理屈は、個人で持っている財産の評価額は、法人の株式の評価額に比して少なく評価される傾向があるからです。ただし、その法人が一定の特殊の会社に該当すると、その株式の評価額が思ったよりも下がらないため、その特殊な会社に該当しないようにうまく法人化する必要があります。
その特殊な会社の一例として、株式保有特定会社と土地保有特定会社を紹介します。
株式保有特定会社とは、その会社が保有している資産のほとんどが株式などで占められる会社を言います。具体的には、株式等の占める割合が大会社なら25パーセント以上、中会社と小会社なら50パーセント以上となる場合には、株式保有特定会社に該当します。
株式保有特定会社の場合、原則として純資産価額方式と言う高い評価額によってその株価が評価されることになります。
土地保有特定会社とは、総資産価額に占める土地などの価額の合計額が一定割合以上の会社を言います。「土地など」とは、土地や借地権などをいい、固定資産である土地はもちろん、販売用の土地も含んで判断することになります。
一定割合ですが、大会社及び一定の小会社は70%、中会社及び一定の小会社は90%とされています。
土地保有特定会社についても、原則として純資産価額方式と言う高い評価額によってその株価が評価されることになります。
これらの会社に該当しないよう、会社が保有する資産について、一部売却したり、土地や株式以外の資産を購入したりするなどして、うまく組成する必要があります。
ところで、これらの会社に該当するかどうかは、原則として課税時期(課税される時期。相続税については、相続の開始時期)において判断されます。このため、相続税対策においては、被相続人に相続が開始しそうな段階で、特に合理的な理由もなく会社の資産を売却するなどして、これらの会社に該当しないようにするといった対策が見られます。
しかし、経済的合理性のない取引を行えば、それは単なる相続税逃れに過ぎないとして国税から処分を受ける場合がありますので、注意してください。
元国税調査官の税理士 松嶋洋
東京大学を卒業後、国民生活金融公庫を経て東京国税局に入局。国税調査官として、法人税調査・審理事務を担当。現在は118ページにも及ぶ税務調査対策術を無料で公開し、税理士を対象としたコンサルティング業を展開。