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M&Aに伴うデューデリジェンスが経費となるか否かの基準を元国税が解説

企業がM&Aを行う際、相手先企業に対するデューデリジェンスの費用や、アドバイザリー費用や法務のリーガルフィーなどが発生します。税務上、これらの費用について一時の経費とすることができるかがよく問題になります。

M&Aと一言で言っても、合併や株式の取得などいろいろな形態があります。とりわけ、後者の株式の取得が絡む場合、この問題が議論されます。と言いますのも、株式の取得に要した費用は、経費にならず、株式の取得価額に含めるべきとされているからです。

取得に要した費用といえるか

株式に限った話ではありませんが、固定資産や棚卸資産などの資産については、本体価格だけではなく、取得に関連する費用は、原則としてすべて資産の取得価額に含め、一時の経費としないこととされています。このため、実務上は取得に関連する費用かどうかが問題になります。

先に述べたM&Aの費用については、株式を取得するかどうか、決定するために必要になる費用と、株式を取得することを決めてからの費用とに大別されます。前者については、買収するに足りる企業であるかを調査するためのデューデリジェンス費用が挙げられます。一方で、後者については、買収を決めた後、財務リスクなどを正確に把握するために行われるデューデリジェンス費用などが該当します。

上記の取扱いを前提とすると、株式を取得するかどうか、その意思決定のための費用は株式の取得のために要するとまでは言えませんが、意思決定をした後に発生する費用は、取得に関連して必要になると言えます。このため、前者は取得価額に含めず経費とし、後者は取得価額に含めるという取扱いが妥当と考えられます。

明確な基準はないが

このような取扱いが妥当と考えられますが、法令上、それは明確ではありません。しかし、このような取扱いを前提に処理を判断した裁決事例がありますし、国税時代に要職にあったOB税理士からも、同様の見解が示されています。このため、M&Aに関連する費用については、実務においては、買収の意思決定がなされた前後で取扱いを変えるべきでしょう。

近年は調査が多い

ところで、近年はM&Aに関連する税務調査が増えていると聞いています。このため、M&Aを行った年度については、国税から調査されるリスクが大きいですので、上記の取扱いを確認するとともに、申告前にあらかじめ処理を見直すこととしてください。

専門家プロフィール

元国税調査官の税理士 松嶋洋
東京大学を卒業後、国民生活金融公庫を経て東京国税局に入局。国税調査官として、法人税調査・審理事務を担当。現在は118ページにも及ぶ税務調査対策術を無料で公開し、税理士を対象としたコンサルティング業を展開。

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