HOME > 法律コラム > 虐待死を起こした多くの親が虐待ではなくしつけのつもりだったと言います。「虐待としつけ」の違いを弁護士が解説!
児童虐待防止法では「児童虐待」を、保護者がその監護する児童に対し「身体的虐待、性的虐待、ネグレクト、心理的虐待」をしてはならないと規定しています。
■身体的虐待
身体に痛みと苦痛が生じ、または外傷のおそれのある暴行を加えること。
■性的虐待
わいせつ行為が中心で、性的対象にしたり、性的行為を強要することも含まれます。
■ネグレクト
著しい減食、長時間の放置、保護者としての監護を著しく怠ること。
■心理的虐待
心理的外傷を与える言動を行うこと。重大な精神疾患を生じさせるため禁止されています。
虐待死を起こした多くの親は、虐待ではなくしつけのつもりだったと言います。
そこで今回は虐待としつけの境界線を的場弁護士に聞いてみました。
弁護士の立場で、虐待は、それがあって子供の生命・身体が脅かされた場合は、暴行・傷害・傷害致死・保護責任者遺棄(致死)などの犯罪が成立したり、虐待した親から親権を取り上げる原因になるような行為ということになりますから、子供の生命・身体などが脅かされる危険をどれだけ発生させているかという視点で判断することになります。
「それをやっちゃったら子供が怪我するでしょう。」と第三者が感じるようなことをしたら、親がどのような意図でしていようとアウトです。
虐待死の事件を起こしてしまった大多数の親は、しつけのつもりだったと語ります。
例えば、壁のボードに陥没ができるほど子供の頭をぶつけていても、体にタバコの火を押し当てるようなことをしていても、しつけのつもりだったと言われます。悩ましいのは、最悪の虐待をした親が平静な時は子供を猫かわいがりする親だったりもするのです。
商店で万引きを繰り返すようになってしまった我が子を治してやりたくて、冬の屋外に裸で出したとか、熱湯を手にかけたといった話を聞くと、親の必死な思いは痛いほど理解できます。しかし、これもアウトでしょう。
「育児ノイローゼ」などという言葉がよく使われますが、親が自分の感情を押さえきれなくなって子に暴力を向ける場合、そこから重大な結果が生じてしまうと虐待をしたという社会的非難を受けることになります。
親権者には懲戒権があると民法は規定していますが、この規定は削除すべきだという声も強く、少なくとも子に強い肉体的・精神的苦痛を与えるような行為は正当な懲戒権行使とは認められないと思います。