HOME > 法律コラム > 「激化する税収争い」ーーふるさと納税の見直しについて税理士が解説
サラリーマンでもできる数少ない節税として、ふるさと納税があります。地方自治体に寄付した金額については、ふるさと納税とされ、その金額は、原則として所得税の寄附金控除として控除の対象になりますが、それと同様にメリットとなるのが返礼品です。寄附をしたお礼に、自治体が交付するのが返礼品ですが、その内容が非常に素晴らしいため、寄附をして節税をしながら素敵なコレクションを集めたり、おいしいものを食べたりすることもできる、という夢のような事態が生じています。
ふるさと納税は地方自治体に対して行うものですから、その返礼品は本来、その地方自治体の特産品が望ましいです。一例を挙げると、将棋の駒の産地である天童市の返礼品は、将棋の駒のストラップとなっていますが、このように、地方の特色とマッチするのが適正です。
しかしながら、地方によっては特産品として打ち出すものが乏しい自治体もあります。このような自治体は、手をこまねいていてはふるさと納税を集められませんので、地方の特色に関係なく、寄附をする方が喜びそうな、美味な食品や豪華な品物を返礼品とすることがあります。このような返礼品はとても魅力的なので、それだけで多くのふるさと納税を集めることができ、結果として大きな収入を得ている地方自治体もあります。
ところで、ふるさと納税は寄附した方が住む自治体で寄付金控除を受けるため、住んでいる団体から、寄付をした団体に税収を移転させる効果があります。その典型例が東京都で、東京都はふるさと納税によって、税収が大きく減少したと言われています。その移転を進めている一番の元凶は、上記の返礼品であることは間違いありません。
このような問題が指摘されたため、平成31年度改正においては、ふるさと納税の対象となる基準として、返礼品の返礼割合を3割以下とすること、返礼品を地場産品とすること等を条件とするという改正が実現しています。
加えて、指定をした都道府県等が基準に適合しなくなったと認める場合等には、総務大臣が指定を取り消すことができるとする旨も盛り込まれています。
この改正は、2019年6月から適用されています。
元国税調査官の税理士 松嶋洋
東京大学を卒業後、国民生活金融公庫を経て東京国税局に入局。国税調査官として、法人税調査・審理事務を担当。現在は118ページにも及ぶ税務調査対策術を無料で公開し、税理士を対象としたコンサルティング業を展開。
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