HOME > 法律コラム > 相続があった場合の株主総会の注意点を税理士が解説
株主総会では会社の最高機関ですので、会社の重大な意思決定においては、必ず開催しなければならないものです。特に、役員の選任や会社の決算の承認を行う定時株主総会は、毎期行うことが義務付けられています。
この重要な定時株主総会ですが、仮に大口の株主に相続があり、財産が未分割の場合には、いろいろと問題が生じます。
相続が発生した場合、遺産分割協議が成立するまでは、相続人の間で相続財産が共有されることはよく知られています。このことは相続した株式についても同様であり、未分割であれば、株式を相続人が共有していることになります。
共有の場合、共有している全員の同意が得られなければ共有財産を処分できませんから、株式を売ることは非常に困難です。加えて、株式を共有するということは株式の議決権を共有することになりますので、議決権の行使についても制限を受けることになります。
具体的に、どのように議決権を行使するかと言えば、相続した分の50%超の同意をもって、相続人間で議決権を行使する者を1名決めて会社に通知をし、その者が議決権を行使することになります。
このため、仮に50%超の同意が得られなければ議決権を行使することが出来ず、会社の運営に大きな影響を及ぼすことになります。
こういう事情がありますので、二代目に承継する自社の株式については、早いうちから後継者に集中できるよう、生前贈与や遺言書を書いて遺贈する、といった対応を考えておく必要があると言われます。生前贈与にしても遺贈にしても、相応の税負担は生じますが、それ以上に会社経営に影響があれば、従業員や取引先にも悪影響を与えることになります。
とりわけ、上記の税負担については、近年その納税を猶予する事業承継税制という制度が充実してきました。この制度の活用も視野に入れながら、賢く確実な事業承継を行う必要があります。
なお、事業承継税制は極めて複雑で大変な制度ですので、適用する場合には、普通の税理士ではなく、事業承継を専門に行う専門家である税理士によく相談する必要があります。
元国税調査官の税理士 松嶋洋
東京大学を卒業後、国民生活金融公庫を経て東京国税局に入局。国税調査官として、法人税調査・審理事務を担当。現在は118ページにも及ぶ税務調査対策術を無料で公開し、税理士を対象としたコンサルティング業を展開。
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