HOME > 法律コラム > 万引きや痴漢を目撃したらどうしますか?現行犯逮捕と誤認逮捕の注意事項を弁護士が解説!
もしも貴方が万引きや痴漢を目撃したらどうしますか?
見て見ぬふりをしますか?それとも警察に通報ですか?
今回は思い切って現行犯逮捕しようとするそんな貴方の為に、注意事項を鈴木弁護士に話を聞いてみました。
また勇気を振り絞って取り押さえたのに、実は犯人じゃなかったとしたらどうなるのでしょうか?
誤認逮捕についての注意事項も併せて解説です。
人の目を盗んで行われるこれらの犯罪は,目撃者が少なく,被害者自身にも犯人が確定できない場合が多いのも現状です。
事件が裁判になった場合も,目撃者の目撃証言は重要な証拠となります。現行犯人逮捕とは,現行犯人(「現に罪を行い,又は現に罪を行い終わった者」(刑事訴訟法212条1項),又は,一定の事項に該当する者が,「罪を行い終わってから間がないと認められるとき」(同条2項))を「何人でも,逮捕状なくしてこれを逮捕することができる」(同法213条)とするものです。
「何人」とは,警察官や検察官だけではなく,私たち一般市民も含まれます。したがって,一般市民も現行犯人を逮捕できることになります。ただし,一般市民が現行犯人を逮捕した場合は,直ちに現行犯人を検察官または警察官に引き渡さなければなりません(同法214条)。
以上により,私たちが現に犯罪が行われている場面に遭遇した場合,一般市民も現行犯人逮捕をすることはできますが,その際は,すぐに110番通報するなどして犯人を警察等に引き渡すことになります。
一般市民により現行犯人逮捕された場合も,刑事訴訟法の手続に従い,裁判を受けることになります。裁判によって,逮捕された人が犯人であると認められずに無罪判決を受ける場合が,誤認逮捕です。
誤認逮捕された人は,身に覚えのない罪により,身体拘束という負担を受け,仕事をやめなければならない等社会上の制裁を受けることになるため,その権利侵害は甚だしいものとなります。
もっとも,一般市民による現行犯人逮捕の場合でも,逮捕の手続が適正であるならば,逮捕をした一般市民自身が誤認逮捕したことにより刑事上・民事上の責任を追及されることはありません。誤認逮捕を受けた人の保護は,刑事補償(憲法40条,刑事補償法)により図られることになります。
ただし,一般市民が,真犯人ではないと分かっている人物を故意に現行犯人逮捕した場合は,捜査機関に真犯人の特定を遅らせ捜査を妨げることになるので,犯人隠匿等の罪(刑法103条)が成立することが考えられます。同様に,不法行為(民法709条)として民事上の責任も追及されることになるでしょう。
以上のように,痴漢や万引き等,目撃者が少なく犯人の特定が難しい犯罪においては,一般市民による現行犯人逮捕が事件解決のために果たす役割は大きいものになります。
しかし,一方で,一般市民にとっては,犯人が現行犯人なのかどうかや,許される実力行使の限界等,判断が難しい場面が多いのも実情であると考えられます。その判断が難しい場合でも,犯人に犯行をやめさせ,その場で110番通報をしたり,目撃証言をすることは可能です。
犯罪の被害に遭い泣き寝入りする被害者を他人事とせず,一般市民が治安の良いまちづくりに貢献する方法はたくさんあるでしょう。