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節税対策の王道である「役員報酬」の隠れたリスクやデメリットを解説

経営者にとって、最も重要な節税は毎年納税するべき法人税の節税です。法人税の節税の際、最も手っ取り早い方法は、経営者及び役員であるその家族で利益の大部分を役員報酬として支給することです。役員報酬については期中で増額ができませんので、予め当期の利益を読んだ上で報酬を決定する必要がありますし、場合によっては報酬が高すぎるとして否認されることもありますが、上手くやれば利益を残さず欠損となり、法人税を納めずに済むことがあります。

このような節税を実行する会社は多いですが、以下のような大きなデメリットがあることも自覚しておく必要があります。

個人所得税や社会保険料の負担

役員報酬を増やすということは、個人の所得が増えるということを意味します。このため、法人税を納めなくてよくなったとしても、個人の所得税や社会保険料が大きく増加します。

とりわけ、個人の所得税は累進課税で所得が大きくなればなるほど税金が大きくなりますし、近年は法人税を下げて所得税を増税するという流れなので、負担がますます増えていくと見込まれます。このため、自分たちの役員報酬に対する社会保険料や所得税の負担についても、予めシミュレーションしておく必要があります。

比準要素1の会社になるリスク

その他、会社の利益を計上しないということは、会社の株価評価で大きなデメリットが生じる可能性があります。株価評価上、比準要素1の会社というカテゴリーがあります。この会社は、株価に影響を及ぼすといわれる「配当金額」、「利益金額」「簿価純資産価額」の3要素について、①直前期末においていずれか2つがゼロであり、かつ、②直前々期末においていずれか2以上がゼロである会社を言います。この会社に該当してしまうと、評価上納税者に有利な類似業種比準価額方式という計算が使えないことになり、評価額が大きくアップしてしまいます。

中小企業においては、配当金額を支出することは多くありませんし、何より利益を計上しなければ原則配当できませんから、上記のような法人税の節税をしてしまうと、この比準要素1の会社に該当する可能性が大きくなります。このため、シミュレーションの結果にもよりますが、株の贈与や相続のためには、原則として利益を残すように措置すべきなのです。

法人税の節税だけ考えると、このようなリスクを見過ごしてしまいますから、専門家とも相談の上、慎重に対応する必要があります。

専門家プロフィール

元国税調査官の税理士 松嶋洋
東京大学を卒業後、国民生活金融公庫を経て東京国税局に入局。国税調査官として、法人税調査・審理事務を担当。現在は118ページにも及ぶ税務調査対策術を無料で公開し、税理士を対象としたコンサルティング業を展開。

※注意事項:記載については、著者の個人的見解であり正確性を保証するものではありません。本コラムのご利用によって生じたいかなる損害に対しても、著者は賠償責任を負いません。加えて、今後の税制改正等により、内容の全部または一部の見直しがありうる点にご注意ください。

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