HOME > 法律コラム > 外国人労働者の就労ビザ取得費用を会社が負担した場合の課税関係とは
人手不足の影響で、近年は外国人労働者の受け入れが多くなっていますが、より効率的に労働者を受け入れるために、就労ビザの取得費用を会社が負担することを検討する企業も増えているようです。この取得費用を会社が仮に負担する場合、税務上問題になるのは給与課税です。
従業員が負担するべき費用を会社が負担した場合、一定の費用を除いて、それは従業員への給与に当たるとされます。従業員に一回お給料を払って、そのお給料を基に従業員会社が負担した費用を支払った、と判断できるからです。
仮にこのように税務署から判断されれば、従業員にはお給料に対する所得税がかかり、会社についても、その所得税に相当する源泉徴収の義務が発生することになります。
就労ビザの取得費用を会社が負担した場合の税務について、明確なものは見つかりませんが、関連する取扱いとして、国税の通達には資格取得費用に関するものがあります。会社の業務に直接必要になる資格を取得する費用を仮に会社が負担する場合、その費用については給与課税の対象にしなくていいというものです。
就労ビザについても、その取得をしないと日本で就労ができない訳ですから、同じ考えで負担してもいいのではないか、という見方もあります。しかしながら、ここでいう「資格
については、従業員が会社で働く中で、自然と習得する技術と大差がないため、その取得費用を給与課税としない、とその趣旨が説明されています。就労ビザは、このような技術とは一線を画しますので、となると給与課税される可能性が大きいと考えます。
その他、就労ビザの取得費用について、会社が負担するべきか従業員が負担するべきか、インターネットの情報を見ますと、労務上の取扱いとしては、従業員が負担すると考えられるという見解を示す弁護士などの専門家が多くいました。労務に関係する法令は専門外ですので確実なことは言えませんが、このような取扱いが労務に関する法令で一般的であれば、会社が敢えて負担するような費用ではないため、やはり給与課税の対象にするべきという結論になります。
今後、国税から明確な見解が示される可能性もありますが、現状の取扱いとしては、原則として給与課税の対象になると考えられます。
元国税調査官の税理士 松嶋洋
東京大学を卒業後、国民生活金融公庫を経て東京国税局に入局。国税調査官として、法人税調査・審理事務を担当。現在は118ページにも及ぶ税務調査対策術を無料で公開し、税理士を対象としたコンサルティング業を展開。
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