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相続税の物納の要件が厳しいのは国税が利用してほしくないと考えているから

相続税では、現金以外の相続財産をもって納税する物納が認められています。この物納は相続税についてのみ認められた制度であり、実際のところは国も換価のリスクがある物納は認めたくないと考えています。このため、いろいろと制限があり、その制限をすべてクリアしなければ物納は認められません。

物納の要件

物納の要件は以下の通りです。

1 複数年にわたって分割して納税する延納によっても相続税が納税できないこと
⇒ この判断は、納税義務者である相続人ごとに判断します。

2 物納申請期限(相続税の納期限)までに、所定の事項を記載の上、一定の書類を添付した物納申請書を税務署に提出すること

3 物納を申請する財産は、相続税の計算の基礎となった財産のうち、次に掲げる財産及び順位で、日本国内にあること

第1順位 不動産、船舶、国債証券、地方債証券、上場株式等
第2順位 非上場株式等
第3順位 動産
この順位ごとに物納することになり、後順位の財産は、原則として先順位の財産で適当なものがない場合に限り、物納できます。

4 物納に充てることができる財産は、担保権が設定されている不動産など、管理処分不適格財産に該当しないものであること。そして、地上権が設定されているなど、物納劣後財産については、他に物納のために適切な財産がない場合に限って、認められること。

生前から動く必要性

上記をご覧いただくとわかる通り、物納が認められているといっても、要件が厳しいため、被相続人の生前から動いておく必要があるといわれます。とりわけ、すべての財産が物納の対象財産として認められる訳ではなく、法律で決まった順位に従うことや、法律で認められている財産が対象になることについては、十分に押さえておかなければなりません。

一方で、物納は「物はNO」などと揶揄されるように、優良な不動産などでなければ国税は認めない、といった風潮がありますが、そんなことはありません。あくまでも法令で決まっているため、国税は法令に基づいて審査するだけです。実際のところ、処分が難しいとされる底地であっても、物納が認められる場合もあります。

専門業者に依頼する

いずれにしても、物納はかなり専門的な世界であり、相続税に詳しい税理士でもあまり経験がありません。この点、物納を専門にしている業者もあるようですから、それらの業者も活用してうまく処理する必要があります。

専門家プロフィール

元国税調査官の税理士 松嶋洋
東京大学を卒業後、国民生活金融公庫を経て東京国税局に入局。国税調査官として、法人税調査・審理事務を担当。現在は118ページにも及ぶ税務調査対策術を無料で公開し、税理士を対象としたコンサルティング業を展開。

※注意事項:記載については、著者の個人的見解であり正確性を保証するものではありません。本コラムのご利用によって生じたいかなる損害に対しても、著者は賠償責任を負いません。加えて、今後の税制改正等により、内容の全部または一部の見直しがありうる点にご注意ください。

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