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「国際税務の観点から日本の法人税は下げる必要がある」についての是非

先日、とあるニュースを読んでいましたが、日本の法人税は高くないと指摘されていました。高くない理由として、研究開発費を支出した場合の税額控除や、海外の子会社から受ける配当金の95%が収益に計上されないことが挙げられ、経常利益の10%ちょっとしか法人税が課税されていないということでした。

このため、今政治家が言うような、法人税率を引き下げる必要はないとそのニュースでは指摘されています。

法人税率を下げる必要があるという議論

皆様も聞いたことがあると思いますが、国際税務の世界では、現状日本の法人税率を引き下げる必要性があるといわれています。その理由は、世界的に法人税率を引き下げることで、企業を自国に誘致するのが近年の傾向だからです。日本の法人税率が高いままであれば、法人税率の低い国に企業が逃げ、結果として税収も景気も低迷するこのような危機感があります。

法人税率を引き下げるということは、その分減る税収を補填する必要があるため、消費税や所得税、そして相続税を増税する必要があります。近年の日本でもこの傾向で、法人税率が引き下がる反面、これらの税金は大きく増税されています。

これらの税金は、国民が負担するべきものですから、企業優遇という批判が多く寄せられ、先のニュースもその一環で書かれたと考えられます。

実質税率で国は選ばない?

先のニュースを前提とすると、日本の法人税率は十分に低いため、これ以上低くする必要はない、ということになると考えられます。実は、この議論はずっと昔からあり、政治家の利権といわれる租税特別措置という政策減税によって、特定の企業だけが減税のメリットを受けているとも指摘されていました。

ここで押さえなければならないのは、企業を誘致するために法人税率の引き下げが必要という目的からした場合、実質的に税負担が減ってもあまり意味がないということです。というのも、企業の立場からすれば、まず判断材料とするのは法律で決まった表面税率だからです。日本のように、この税率が高ければ、いくら政策減税などで実質的に税負担が少ないとしても、企業の誘致につながるとは限りません。

加えて、政策減税は使うのにいろいろと要件がありますので、税理士報酬などのコストが発生します。となると、国民負担が増えるのは厳しいですが、表面税率を引き下げる必要性はやはりある、と言わざるを得ないのが正直なところです。

専門家プロフィール

元国税調査官の税理士 松嶋洋
東京大学を卒業後、国民生活金融公庫を経て東京国税局に入局。国税調査官として、法人税調査・審理事務を担当。現在は118ページにも及ぶ税務調査対策術を無料で公開し、税理士を対象としたコンサルティング業を展開。

※注意事項:記載については、著者の個人的見解であり正確性を保証するものではありません。本コラムのご利用によって生じたいかなる損害に対しても、著者は賠償責任を負いません。加えて、今後の税制改正等により、内容の全部または一部の見直しがありうる点にご注意ください。

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