HOME > 法律コラム > 一次相続の遺産分割協議がまとまらないうちに二次相続が発生したらどうなる?
父である被相続人の死亡後、遺産分割協議が難航している間に、今度は父の相続の相続人である母が亡くなる、といった不幸が重なるケースがあります。相続税法上、このような場合にどう取り扱うのかが問題になります。
具体的な取扱いとしては、最初に発生した父の相続(第一次相続)について、その相続の権利を有する母の相続分を、母の相続人が行使することになります。その後、母の相続(第二次相続)については、通常の通りの遺産分割を行います。
相続分を明示して、具体的に解説します。
父が死亡した第一次相続において、相続人が母、長男、次男とした場合、通常は母が1/2、長男が1/、子次男が1/4の相続分を持っています。この場合、父の遺産分割が確定する前に母が亡くなれば、母の相続分である1/2を、母の相続人である長男と次男が、それぞれ第一次相続の未分割財産に対する請求権として有することになります。
結果として、このまま第一次相続の申告期限が到来すれば、第一次相続も第二次相続も未分割ですので、子二人は以下の申告をすることになります。
1/4(それぞれが有する父の相続に対する相続分)+1/2(母が有する父の相続に対する相続分)×1/2(それぞれが有する母の相続に対する相続分)
ところで、相続財産のうち、配偶者が取得した財産については、1億6千万と、配偶者の法定相続分に応じる財産の金額までのいずれか大きな金額まで、相続税が課税されないという配偶者の税額軽減という特例が適用されます。このため、上記のように第一次相続の遺産分割が終了する前に、配偶者が亡くなった場合には、どのような取扱いになるかが問題になります。
この点、先に見た通り、第一次相続における配偶者の相続分は、配偶者の相続人が承継する訳ですが、この配偶者の相続人が第一次相続の遺産分割協議において、配偶者の具体的な相続分を確定させれば、第一次相続の相続税の申告において、配偶者が取得する財産を確定させたとして、配偶者の税額軽減を適用できるとされています。
その他、10年以内に相次いで相続することから、一定の場合には、第一次相続の相続税のうち一定の額を、第二次相続の相続税額から控除できる相次相続控除の適用を受けることもできます。詳細は専門家にお尋ねください。
元国税調査官の税理士 松嶋洋
東京大学を卒業後、国民生活金融公庫を経て東京国税局に入局。国税調査官として、法人税調査・審理事務を担当。現在は118ページにも及ぶ税務調査対策術を無料で公開し、税理士を対象としたコンサルティング業を展開。
※注意事項:記載については、著者の個人的見解であり正確性を保証するものではありません。本コラムのご利用によって生じたいかなる損害に対しても、著者は賠償責任を負いません。加えて、今後の税制改正等により、内容の全部または一部の見直しがありうる点にご注意ください。