HOME > 法律コラム > 国税の通達でも明確にされていないソフトウェアの財産の評価はどう考えるべきか
相続税の計算上、相続財産については国税の通達に基づいて評価しなければなりませんが、その通達において評価方法が明確でないのがソフトウエアです。ソフトウエアについては、国税の内規等で評価方法が定められており、原則としてそのソフトウエアが販売目的か、自社利用目的か、その区分に応じて評価することになっています。
ソフトウエアの評価ですが、ソフトウエアについては個人で使うというよりも、法人がビジネスで使う場合が多いため、実務上はその法人の株価評価において問題になることが多いです。この株価評価は、非上場会社の場合、法人の財産を相続税評価額で評価し、その評価額に基づいて株価を計算する純資産価額方式などで計算しますが、この純資産価額方式においてソフトウエアを評価する必要があるため問題になります。
販売目的のソフトウエアとは、具体的には複写して販売するための原本としてのソフトウエアを意味します。このソフトウエアは、使用許諾契約をユーザーと結ぶことによって、将来的なキャッシュフローをもたらすものです。ここに着目して、相続税の評価上は、特許権や著作権の評価に準じて評価するとされています。
特許権や著作権は、原則として将来得られると見込まれる権利収入をベースに評価することとされています。このため、販売目的のソフトウエアについても、将来得られるであろう収入金額を合理的に見積もり、その見積額をベースに評価します。
とはいえ、見積額という点で確定しているものはありませんので、税務調査で国税と見解の相違が生じる可能性が非常に多いいですから注意が必要です。
自社利用目的のソフトウエアは、自社の研究開発用のソフトウエアや、他から購入し、使用承諾を得て自社で使用するソフトウエア、そして自社で利用するために専用のプログラムを自社や他者で開発したソフトウエアなどを意味します。自社で使う以上は、車などの減価償却資産としての側面が強いため、これら一般動産の評価に準じて評価するとされています。
一般動産は、調達価額や再取得価額を基礎として評価するとされています。これらの金額は、原則として適正な減価償却をした上で計算される簿価になりますので、貸借対照表の計上金額と同額で評価していれば、原則問題ありません。
元国税調査官の税理士 松嶋洋
東京大学を卒業後、国民生活金融公庫を経て東京国税局に入局。国税調査官として、法人税調査・審理事務を担当。現在は118ページにも及ぶ税務調査対策術を無料で公開し、税理士を対象としたコンサルティング業を展開。
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