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「法人税を下げる」と明言する安部首相。では逆に法人税率を上げると、税収は増えるのか?!

最近話題の「法人税率を下げる」。安倍晋三首相が「来年から実現する」と明言していますが、これにはどういった意図があるのでしょうか?

法人税を下げると明言しておきながら、今年4月には消費税率がアップされ、来年には相続税が上がることになっています。さらには、今後所得税も実質増税になる方向で議論されていますから、法人税だけ減税というのは違和感をおぼえます。

「景気が良い」→「法人税収増加」→「逆に法人税下げたら、もっと景気が良くなって更に税収アップ?」

先日の発表で、2013年度の法人税収が政府の見込みより最大1兆円上振れすることがわかりました。中小企業の納税額は小幅増にとどまる見通しですが、2014年3月期決算の上場企業において、納税額は前期比で5割増えたそうです。

つまり、予想よりも景気が良くなって、税収が増えているのだから、さらに法人税率を下げて、景気を良くして、儲かった法人に税金を課せば、税率を下げても結果として税収が増えるのではないか、という議論です。

お金持ちにもっと課税 VS みんなに広く薄く課税

つい先日、書店で面白そうな本を見つけて読みました。

「金持ちは税率70%でもいいvsみんな10%課税がいい 1時間でわかる格差社会の増税論」(東洋経済新報社 ポール・クルーグマン他)

この本は、金持ちにもっと税金を課すべきなのか、それとも偏った課税ではなく、広く薄く課税すべきなのか、学者・実務家を2対2対でディベートさせたものです。

有名な方々がいまだ議論しているくらいですから、この議論には全員が納得する結論がないのですが、国の借金が1000兆円を超えて、毎年赤字国債を乱発している日本の運営状態からすれば、どの税金から税収を上げるかは非常に大事な議論です。

法人税率を下げることの是非

法人税率を下げて、税収が増える理論としては・・・

【法人税率を下げる】
→ 法人の税引き後利益が増える
→ 法人が先行投資や人件費を増やす
→ 景気が良くなる
→ 法人が儲かる
→ 結果として、法人税収が増える

というものですが、一方で、逆のシナリオも考えられます。

【法人税率を下げる】
→ 法人の税引き後利益が増える
→ 法人が内部留保を増やす
→ 景気は良くならない
→ 法人の利益は増えない
→ 結果として、法人税収は減る

法人税率を上げるか下げるかの議論というのは、単純にこれだけではなく、「(税率を変更する前の)国内の景気」や「海外の法人税率」も考慮しなければなりません。

どちらにしても、国内の景気が良くなれば、自然に税収が増えるのは確かで、これを前提にすると、まだまだ法人税率を下げる余地は大きいといえます。

執筆  久保憂希也
1977年 和歌山県和歌山市生まれ
1992年 智弁学園和歌山高校入学
1995年 慶應義塾大学経済学部入学
2001年 国税庁入庁 東京国税局配属
東京国税局管内の税務署で税務調査を担当。
2008年 ㈱InspireConsultingを設立。税務調査のコンサルタントとして活動。
人気のセミナー講師として年間50回以上、セミナーの壇上に立つ。
著書には、「~元国税調査官が斬る~税務調査の真実」「元国税調査官が解説
実例・判決で学ぶ税務調査の深奥」「元国税OBによる税務調査と実務対応」「社長、御社の税金は半分にできる!」
「社長、税務調査の損得は税理士で決まる!」「すべての日本人のための 日本一やさしくて使える税金の本」など、多数。

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